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ザ・ファーム 法律事務所

2013年05月30日 13時59分51秒 | 洋画1993年

 ◇ザ・ファーム 法律事務所(1993年 アメリカ 155分)

 原題 The Firm

 staff 原作/ジョン・グリシャム『法律事務所』

     監督/シドニー・ポラック

     製作/シドニー・ポラック スコット・ルーディン ジョン・デイヴィス

     脚本/デヴィッド・レイフィール ロバート・タウン デヴィッド・レーブ

     撮影/ジョン・シール 美術/リチャード・マクドナルド 音楽/デーヴ・グルーシン

 cast トム・クルーズ ジーン・ハックマン エド・ハリス ホリー・ハンター テリー・キニー

 

 ◇人間味という点において

 シドニー・ポラックという人は、いつも知的だ。監督としても、製作者としても、俳優としても知的な印象を崩さない。この作品ももちろんそうで、底辺にあるのは社会悪に対する正義の志だろう。トム・クルーズはそうしたポラックの代弁者ってことになるわけだけど、やっぱり法科大学院を出たてって設定だから非常に若い。この若さが正義感が即時そのまま行動に反映する。

 貧窮の子ども時代を送った者はたいがい、給料も自家用車も住宅も、なにもかも高級でありたいと渇望する。子どもの頃にかみしめた惨めさは、金持ちになって、ほかの連中を見返し、優越感にたっぷりと浸りたいという強烈な意志を生む。トム・クルーズはそうした過去を持つ勤勉な学生ってことになってる。けれど、こうした勉強だけやってきたような青臭い新入社員は、社会人として練れてない分、甘い罠に嵌まりやすい。結局、嵌められる。

 けど、持ち前の行動力によって、自分の就職した法律事務所がマフィアと深く関係し、マネーロンダリングなどを行い、それに抗おうとした同僚4人を殺しているという、とんでもない真実を、盗聴や脅迫や実際の危機を乗り越えて暴露していく。そこに大きく関与してくるのがトムの妻ジーン・トリプルホーンで、彼女はジーン・ハックマンの誘いに乗るふりをして秘密を探り出そうとするんだけど、このふたりの場面は、別な緊迫感をもたらしてくれる。というのも、正義感だけで突っ走られても、どうも人間味が足りないからだ。

 冒頭から中盤にかけてはいろんな物に執着するさまが描かれてるのに、途中からどんどん正義の人になっていく。けど、ジーン・トリプルホーンとジーン・ハックマンはちがう。夫の不貞に嫉妬しながらも夫を愛している自分に悩み、考え、行動するのは、それはそれで人間的だし、悪に手を染めたいとはおもっていなかったのに、いつのまにか手先になり、手先になりながらも、心の奥底にある良心によって完全な悪になりきれない、といったなんとも人間臭いところをハックマンが見せてくれているからだ。

 ただ、もっと人間臭いのは事務所の連中だ。法律を扱っているからといって、それはひとつの職業に違いないわけで、仕事を依頼されれば、それがマフィアであろうと淡々とこなして何が悪いんだと、この事務所の連中はひらきなおってる。もちろん、悪事に加担した時点でそれはいけないことなんだし、だからこそ、FBIの捜査対象にされてるんだけど、人間がいかに金に弱く、高級な物に惑わされるのかっていう賤しさを、かれらは見せてくれてる。賤しい人間にはなりたくないけど、そういう気持ちはよくわかる。

 いやだ、いやだ。

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