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ロープ

2013年05月14日 23時24分44秒 | 洋画1941~1950年

 ◇ロープ(1948年 アメリカ 80分)

 原題 Rope

 staff 原作/パトリック・ハミルトン戯曲『Rope's end』

     製作/アルフレッド・ヒッチコック シドニー・L・バーンスタイン

     監督/アルフレッド・ヒッチコック

     脚色/ヒューム・クローニン 脚本/アーサー・ローレンツ

     撮影/ジョゼフ・ヴァレンタイン ウィリアム・V・スコール

     美術/ペリー・ファーガソン 音楽/レオ・F・フォーブステイン

 cast ジェームズ・スチュアート ジョン・ドール ファーリー・グレンジャー

 

 ◇1924年5月21日、シカゴ、ローブ&レオポルト事件

「世紀の犯罪」という表現を史上初めて用いられたこの事件は、

 シカゴ大学に在籍し、同性愛の関係にあるユダヤ人学生の、

 ネイサン・フロイデンソール・レオポルド二世とリチャード・アルバート・ローブが、

 ユダヤ人実業家の息子で当時16歳のボビー・フランクスを誘拐殺害し、

 身元がばれないように顔と性器を硫酸で焼き、遺棄した上で、

 身代金誘拐に見せかけようとしたものの、ほどなく捕まった完全犯罪未遂事件だ。

 ちなみに、犯人ふたりが罪を認めながらも異常性をちらつかせ、

 たがいに罪をなすりつけあい、死刑においこまれようとするのを、

 老齢の弁護士クラレンス・ダロウが、世間の注視の中、

 終身刑(殺人罪)と99年の懲役刑(誘拐罪)に持ち込むという、

 至極、興味深い事件ながら、

 パトリック・ハミルトンは同性愛の部分を中心に戯曲の下敷きとしただけで、

 ヒッチコックもまた戯曲をほぼそのまま映像化し、

 事件については追わなかった。

 理由は、わからない。

 ヒッチコックは『見知らぬ乗客』を観るかぎり、

 同性愛には興味があったみたいだから、

 この事件はかっこうの題材だとおもうんだけどね。

 ま、それはともかく。

 この映画が「初づくし」となっているのは、

 なにも『ローブ&レオポルト事件』を初めて映像化したってだけじゃない。

 よくいわれているように、ホモを題材にした初めての映画であること、

 ヒッチコックの初のカラー作品であること、

 また、初の製作作品であること、

 さらに、初の現実時間との同時進行であること、

 くわえて、ジェームズ・スチュアートがヒッチコック作品に初出演したこと、

 以上の5点からだ。

 初の全編ワンショット撮影ともいわれるけど、これは明らかな間違い。

 ワンショットというのは、

 カメラが回り始めて停止するまでの一連の動作をいうもので、

 途中で止まってしまっては、ワンショットにならない。

 尺80分の短さながら、

 35ミリカメラの当時のマガジンは最長でも15分ほどしか撮影できない。

 だから、全編ワンショットに見せかけるために、

 ヒッチコックは苦労したにちがいない。

 死体を入れた箱を開いたときの蓋や登場人物の背中に寄り、

 暗転したような一瞬をつないで、

 あたかもワンショットのように見せているんだけど、

 それでも限界はある。

 で、結局、カットを割った。

 ジェームズ・スチュアートのバストショットから始まるカットだ。

 でも、80分の尺の内、ぼくが数えることができたのは、

 ちょっと好い加減ながら、トップも含めると7回のカット割りで、

 そのほかの繋ぎは見当たらなかった。

 カットの長さは約6分から約13分に散らばっていて、

 平均は11分くらいだったから、ほぼ80分になるよね?

 卒論にこの映画を取り上げるんなら、

 ストップウォッチ持って測るんだろうけど、

 悲しいかな、ぼくの当時、そんなことはおもいもよらなかった。

 実際、『ロープ』を観るためには名画座に行かないといけなかったし、

 テレビでやるのを待ってたら、卒業式が来ちゃっただろう。

 つまり、映画の研究室にでもいないかぎり、

 一般の大学生では、『ロープ』の研究は、ほぼ不可能だった。

 てなことからすると、

 ほんとに好い時代になったもんだね。

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