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ヒッチコック

2013年05月10日 18時00分02秒 | 洋画2012年

 ◎ヒッチコック(2012年 アメリカ 98分)

 原題 Hitchcock

 staff 原作/スティーヴン・レベロ『アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ』

     監督/サーシャ・ガヴァシ 脚本/ジョン・マクラフリン

     撮影/ジェフ・クローネンウェス 美術/ジュディ・ベッカー

     音楽/ダニー・エルフマン 特殊メイク/ハワード・バーガー グレゴリー・ニコテロ

 cast アンソニー・ホプキンス ヘレン・ミレン スカーレット・ヨハンソン トニ・コレット

 

 ◎1960年6月16日、サイコ封切

 実話をもとにした映画は、大きく分けると2種類ある。

 告発と讃歌だ。

 つまり、

 誰も知らないような事実の裏側を暴き露わして、世間に知らしめる物。

 誰も知らないような秘話を見つけ出して、当事者を褒め讃える物。

 という2種類だけど、この映画はもちろん後者だ。

 ただし、讃えられているのは、ヒッチコックではない。

 愛すべきサスペンスの神様を支えた妻アルマ・レヴィルで、

 要するに、愛夫物語ってわけだよね。

 だから『サイコ』のメイキングが前面に押し出されているものの、

 そんなものは作品の味付けで、

 常に仕事を優先し、同時にかなりの女たらしだった夫が、

 ちょっと仕事でかげりが見え始めたとき、

 陰に日向に夫を支えてきた妻が発奮し、

 壊れかけていた夫婦の絆をふたたび結び直すんだけど、

 そこには、どこまでも夫を信じ、夫を誇りにおもっていた妻の愛情があったっていう、

 いってみれば古典的な感情のやりとりを主軸にした話になってる。

 ハリウッドは、ほんと、定番の崩さないっていうか、王道を歩んだ映画作りをする。

 実際、ぼくたちはこの夫婦が必死に作り上げようとしてる『サイコ』を知ってる。

 それがどれだけ凄い作品で、全世界を恐怖と興奮に包み込んだかってことも、

 そう、何十年も前からよく知ってる。

 だから、ヒッチコックがどれだけ悩み苦しんでも、

 資金難で崖っぷちに立たされることになっても、

「けど、いいもん食ってたんだな~」とか、

「自分の浮気は棚に上げて、妻の不倫疑惑に苛まれるわけね」とか、

 余分なことを考えつつも、まあ、落ち着いて見ていられる。

 ただ、アルマが脚本のシノプシスの段階から、

「30分で殺すのよ」とかいう肝心なことまで意見してたとか、

 夫の代わりに撮影現場に立ったり、

 最初は緊迫感のない作品が仕上がっていたのに、

 彼女が編集に参加して、シャワー場面の音響まで口を出していたとか、

 へ~そうだったのか~てなこともおもったわけだけど、

 これがどこまで事実に即しているのかってことは、実はどうでもいい。

 ずたぼろになった夫のために、

 才能ある妻がどれだけ奮闘するかって話なんだから。

 そのあたりは、アンソニー・ホプキンスとヘレン・ミレンは実に見事で、

 まったくもって非の打ちどころがない。

 おもわずくすりとしてしまったのは、観客が絶叫する劇場内の声を聞いて、

 アンソニー・パーキンスが包丁を振り下ろすように踊る場面だけど、

 もうひとつ、ある。

 ときどき、スタジオの横を通りかかるブロンドに鴬色の服を着た女性を、

 ヒッチコックがむすっとした表情のまま、ちらりと見つめるところだ。

 ティッピ・ヘドレンによく似たその女性の登場が暗示するのは、もちろん、

 鳥、だ。

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