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バルカン超特急

2013年05月16日 16時05分11秒 | 洋画1891~1940年

 ◇バルカン超特急(1938年 イギリス 97分)

 原題 The Lady Vanishes

 staff 原作/エセル・リナ・ホワイト『The Wheel Spins』

     監督/アルフレッド・ヒッチコック

     脚本/シドニー・ギリアット フランク・ラウンダー アルマ・レヴィル

     撮影/ジャック・E・コックス 特殊撮影/アルバート・ホイットロック

     美術/モーリス・カーター 音楽/ルイス・レヴィ チャールズ・ウィリアムズ

 cast マーガレット・ロックウッド マイケル・レッドグレイヴ メイ・ウィッティ ポール・ルーカス

 

 ◇interesting,most interesting!

 というのは、マイケル・レッドグレイヴの台詞なんだけど、

 なにが「実に面白い」のかといえば、

 バルコニーから落ちてきた植木鉢で頭を痛打され、

 意識が朦朧とした自分を抱えながら特急列車に乗り込んだ婦人が、

 まるで煙のように姿を消してしまい、

 彼女を目撃したはずの乗客はおろか、車掌までもがいなかったと答え、

 さらには食堂車で一緒にお茶を飲んだはずが伝票にはひとりと記載され、

 くわえていないとされていた婦人とまったく同じ服装の女が登場し、

 あなたを抱えて列車に乗り込んだのはわたしよと証言したばかりか、

 それまで婦人はいなかったと証言していた乗客たちが、

 今度は口をそろえて「このご婦人は最初からいた」と新たな証言をするという、

 なんとも狐に抓まれたような話の展開について、だ。

 たしかに、おもしろい。

 前半30分はものすごくかったるく、観るのをやめたくなるくらい、

 登場人物の紹介がだらだらと続いて、誰が主人公かもわからないような、

 なんともヒッチコックらしくない状況説明がなされるんだけど、

 バルカン・エクスプレスが出発するや、にわかにおもしろくなる。

 もちろん、脚本の細部を眺めれば突っ込み処はいくつもある。

 けど、それをさしひいても、

 第二次世界大戦前夜に、これだけのサスペンスを撮れたのは奇跡的だ。

 だから、

 1979年には『レディ・バニッシュ 暗号を歌う女』としてリメイクされたんだろうけど。

 それはさておき、この「実におもしろい」設定なんだけど、

 観ている内に、ここ数年の場合、とある映画をおもいだす。

 そう、『フライトプラン』だ。

 ま、それについてはまたの機会にして、

 バルカン・エクスプレスという特急列車は、実際に存在する。

 オリエント急行の末裔で、イスタンブールからベオグラードまで走ってる。

 といっても、昔のような豪華列車ではなくて、単なる深夜特急だ。

 1等車はともかく、2等車にでも乗ろうものなら、

 寝台も自分でがちゃんとおろさないかぎり、普通のコンパートメントだしね。

 実をいうと、ぼくは昔、このバルカン号に乗ったことがある。

 イスタンブールからソフィアまで、ソフィアからブカレスト、

 ブカレストからベオグラード、ベオグラードからブダペストまでの4度。

 もちろん、2等車。

 ただ、乗ったとき、ぼくはまだこの映画を観ていなかった。

 残念でならない。

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