◎アイリス(2001年 イギリス 91分)
原題 Iris
staff 監督・脚本/リチャード・エア
原作/ジョン・ベイリー『Elegy for Iris』
撮影/ロジャー・プラット 美術/ジェンマ・ジャクソン
衣装デザイン/ルース・マイヤーズ 音楽/ジェームズ・ホーナー
cast ジュディ・デンチ ケイト・ウィンスレット ジム・ブロードベント ヒュー・ボネヴィル
◎アイリス・マードックの伝記
実話だけに、ひしひしと感じるものはある。
作家がアルツハイマーになるっていうのは、なんだか皮肉めいた話だ。
もちろん、誰にだって見舞われる可能性のある症状なんだけど、
哲学者としても高名だったアイリスにしてみれば、
頭が働かなくなってくるときの恐怖はたまらなかったろう。
そういう微妙なところをジュディ・デンチは見事に演じてて、
夫役のジム・ブロードベントがこれまた好い。
20世紀英国を代表する女流作家であろうとなんだろうと、
病魔は静かに忍び寄り、本人も気づかない内に脳を蝕んでゆく。
この映画のいいところは、
単にアルツハイマーに冒された妻の看護をするものじゃなくて、
オックスフォード大学での恋物語が濃厚に描かれているところで、
それがあるからこそ、
老人映画になっていない。
そのあたりは脚本が上手に練られてる感じがするし、
きちんと片づけられていた書斎が、
どんどんと乱雑になり、やがて薄汚くなっていくんだけど、
こういうあたりはリアルなんだろな~とおもった。
もっとも、
片づけられない人間の部屋の中ってのは、
最初からくちゃくちゃなんだけどね。
それだと悲しさが伝わってこないんだろな~。