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明日への遺言

2014年06月30日 00時16分40秒 | 邦画2008年

 ◇明日への遺言(2008年 日本 110分)

 staff 原作/大岡昇平『ながい旅』

     監督/小泉堯史 脚本/小泉堯史、ロジャー・パルバース

     撮影/上田正治、北澤弘之 美術/酒井賢 衣裳/黒澤和子

     音楽/加古隆 主題歌/森山良子『ねがい』 題字/今井凌雪

 cast 藤田まこと 蒼井優 富司純子 近衛はな 頭師佳孝 西村雅彦 竹野内豊

 

 ◇法戦の人

 おそらく、真摯な人だったのだろう。

 岡田資陸軍中将は、肖像写真を観てても、

 その眼光の快活さと表情の明朗さから、

 なんだか気持ちの爽やかな青年がそのまま老いていった観がある。

 肖像だけでは人間の本質はわからないという人もいるけど、

 ぼくはそんなことはないんじゃないかっておもうんだ。

 やっぱり、気持ちの爽やかな人は、そういう顔をしてる。

 で、岡田資という軍人さんもたぶんそうだったろうと、ぼくはおもってる。

 この人は、ほとんど敵との交戦はしていない。

 武官として名の知れた人というべきで、

 岡田がB級戦犯になったのは、

 1945年5月14日の名古屋空襲の際、B-29の乗組員27名を処刑したという点で、

 これについて岡田は、横浜の軍事法廷において徹底的に争った。

 主張するところは2点で、

「一般市民を無慈悲に殺傷しようとした無差別爆撃である」

「搭乗員はハーグ条約違反の戦犯であり、捕虜ではない」

 というもので、けれどこの法戦は岡田に利なく、

 1949年9月17日、巣鴨プリズンで絞首刑に処せられた。

 で、ぼくはおもうんだけど、

 この作品はどうしてセミ・ドキュメントにしなかったんだろう?

 あるいは、どうしてドキュメンタリー調にしなかったんだろう?

 岡田の人となりを描くのはもちろんだけど、

 軍事法廷についてまっこうから挑むつもりで描くならば、

 情緒に左右されず、空襲と処刑の真実を探求しようとする方が好かったんじゃないか。

 そんなふうにおもうんだよね。

 ちなみに、この映画は、すーちゃんこと田中好子の遺作だ。

 彼女には『黒い雨』っていう代表作があるけど、

 なんだか戦争をしてた時代がしっくりくる凛としたところのある女優さんだったね。

 ま、ぼくはキャンディーズではいちばんのご贔屓だったけど。

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