私自身、昔デッサンを勉強したから、絵画を描く気分が少しはわかる。そんな絵画を描く時のように撮影するという瞬間はとても興味深い一時である。
ただし絵画ならば、記憶や想像で描ける場合もあるが、撮影の場合は被写体が不可欠である。ここでは、雨上がりの盛りを過ぎた高台寺の庭をモチーフにした。多様な庭園の光景の中から、絵画を描くときのようなアングルを探し出すというのは、大変面白い瞬間である。
そして絵画のときのように、優れた筆が必要になる。それが、マクロプラナーである。このレンズを持つと絵画を描く時の気分にさせてくれるところが、個人的には好きだ。背景をこれぐらいボカして、こんなアングルで構成してみようかといった具合に思考してゆく過程は、絵画にも似ていて大変面白い。
実は、撮影者をそのような気分にさせてくれるレンズが大変少ない。どんな焦点距離でもOKだと言わんばかりのズームレンズではとても筆には思えないし、そんな無数の焦点があったのでは、私には使いこなせない。私には、100mmという一つの画角を切り取る良質の筆が1本あれば十分のように思われる。
カールツァイス・マクロプラナーは、絵画やデッサンをしているときの気分にさせてくれる希有なレンズである。
京都市・高台寺 2009年12月3日撮影
Fuji FinepixS5pro,Carl Zeiss Makro Planar f2/100mm,ZF.
シャッター:1/120,絞りf4,ISO200,カラーモードF2.