メディアも感染症の状況報道ばかりで、先の見通しに関するニュースをみかけない。そればかりか論拠なき情報が多すぎてさ。そこで札幌医科大学のサイトをみたらトラジェクトリー解析だって。予測精度はあがりそうだけど、それって工学の立場では昔弾道計算で応用したが、感染症変化率と流体の変化率とが類似性があるとする事が、この解析方法を使える大前提だが、はたしてその類似性を証明した論文はどこだったかな!?。参考文献が記述されていないので、博士号を持つ人間にはよくわからない。だからデータを集めて自分で調べてみよう。
その時自分の頭と手で計算して納得できる事が大切。そのために中学生でも理解できる科学の一般化が必要になる。そんな視点からワクチン接種の効果を、先駆け事例でありEUを離脱したイギリスでみてみよう。
メディアにしばしば登場するCOVID-19にする指標をあげてみると・・・(国内及び世界のの感染者数・死亡数、国内の重傷者数・入院患者数、各地の感染状況6つの指標、新たな感染者数前週比の推移、都道府県毎の病床使用率グラフ、国内のPCR検査実施件数・・・)。
このように情報の乱立である。これはPCR検査によって感染者数がわかり、それが未発症、発症、発症後の経過が軽症、中等症、重傷に細分化及びカテゴライズされといった具合に、すべて感染状況カテゴリーの指標である。基礎再生産数や都市の人口流動を係数化した実効再生産数も、同様に感染状況を示す指標の一つにに過ぎない。これらのデータで感染状況はわかるが、それ以上のことはわからない。
ここでは、概念として理解できればよいので、感染者数とワクチン接種者数の2指標の相関に着目した。当然この2指標は負の相関(逆相関)の性質を含んでいる。感染症を見てゆく基本である時系列推移データで、ワクチン接種時あたりからデータを拾えば、予測式で感染の終息時期を見通すことができる。そうした計算はExcelで簡単にできる。
こうした関係性から社会的免疫の形成度とすることができ、これまで我が国では議論されなかった新しい指標「社会的免疫性」があるだろう。では、試みてみよう。
図1.イギリスの感染者数及びワクチン接種数
図1は、12月20日から4月2日までのイギリスの1日の感染者数(A)と1日のワクチン接種者数累積数(B)をみたものである。接種は1回のみの数である。累積値のため1日毎の接種者数に計算しのが(C)である。
データをみると、この期間の最大値は、1月3日の58,784人であるが以後低減傾向が続き4月3日で3,402人と大幅に低減し、ワクチン接種の効果が認められる。
図2.二つの指標の相関係数
図2は、期間内の感染者数とワクチン接種者数の相関係数を算出したものである。この3ヶ月あまりの期間を通じ相関係数0.0723と正の相関ではあるが値は大変低い。そこで月ごとでみると1月が0.0799、2月が0.4381、3月以降が0.1048といずれも正の相関であり、この範囲の変動は拮抗している状態だ。変動の要因は変異ウィルスの出現と推測できる。
この状況では収束時期の予測ができない。今後変異ウィルスで正の相関を繰り返しながら、感染拡大ととワクチン接種との拮抗状態が続くのか、それとも相関係数がマイナス値となり社会的免疫性を獲得し収束に向かうかは、現時点ではデータにそれを示す痕跡が見られない。
感染の推移構造は原理上3ステージある。正の相関を続けるワクチン接種時の状態、拮抗状態、社会的免疫性を獲得しつつある状態、これらの概念をしめすと図3になる。
図3.感染者数とワクチン接種者の関係概念図
イギリスは今STAGE2の状態でワクチン接種率が47%とメディアは報じていた。従ってまだ収束に向けた動向が見えず、収束時期も予測できないから社会的免疫性は形成されていないと考えられる。それは恐らくワクチン接種率が過半を越えたあたりから、見えてくるのではなかろうか。
集団免疫は、国民全員が感染して感染が止まる状態である。我が国の場合4月6日現在489,986人が感染し、9277人(1.9%)の死者をだしている。集団免疫であれば230万人の死者を出すことになり、第二次世界大戦時日本の人的損失(190万人)を超える。もちろん最悪のシナリオだ。
それに対して社会的免疫は、ワクチン接種によって感染が収束に向かう概念である。
以上のことから、残念ながら本日時点では、イギリスの収束時期は見通せないことがわかった。収束時期を予測するのであれば、ワクチン接種が早かったイスラエルやアメリカのデータなら計算できるかもしれない。ただし私はそれらのデータはストックしていない。
一つ言えることは、イギリスのワクチン接種が昨年12月から進められてきたことだ。5ヶ月でSTAGE1からSTAGE2の感染拮抗期にこぎつけたということになる。ただしイギリスはワクチンを開発製造し世界に供給しつつの5ヶ月だ。我が国ではワクチンの開発製造をしていない。しかも世界各国がワクチンの奪い合いをしている状況下でオーダーどおりに輸入されるかどうかは、わからない。
拮抗期がどれほど続くかはイギリスのデータがいずれ示すだろう。従って我が国が感染拮抗期に到達するまでに、イギリスの経験をもとにすれば、3月接種開始として8月以降、仮にワクチン輸入の遅れが3ヶ月程あったとすると10月頃か?。そうなると現時点では、感染が納まるのはその先だということになる。さてそれまで飲食店などの自粛が続くのだろうか・・・。閉じこもらざるを得ない蒸し暑い夏になりそうだ。
追伸
この記事を書いていたら全国の感染者数が急速に拡大し始めた。
4月5日、6日、7日、8日の値、括弧は基礎再生算数(前日比)
東京249人、399人(1.6人)、555人(1.3人)、545(人0.98人)
大阪341人、719人(2.1人)、878人(1.2人)、905人(1.03人)
変異ウィルスによる感染力の高さを大阪の基礎再生産数2.1人で伺うことができるが、翌日は1.03人である。今後2.1人以上の数値で連続推移すれば、変異ウィルス要因といえそうだが、現時点ではそれらが混在している状態。メディアが報じる若い人が変異ウィルスの温床というのはあたらない。それは若い人だけが感染するウィルスだとする定義はないからだ。それよりも人間の行動要因が大きい。繁華街へ人々が多く出てきた事によって感染が高まったのが第1の要因だろう。変異ウィルスは全ての世代が感染する可能性がある。
さてWEBサイトを見ていたら「小池は策なし」と書かれてあった。それをいっては都知事が可哀想だ。国も行政も最初から策などというものはない。精々不特定多数の人間が集まる宴会等は禁止し、ただ静かにしていろ!、だけである。そんなところを議論しても意味はない。唯一の解決策はワクチン接種のみである。
トランプ前大統領は7ヶ月でファイザーの有効性が高いワクチンを開発しイスラエルで治験をおこない承認した。そんなワクチンも世界的争奪戦のなかで政治取引に使われる場合も出てくるだろう。日本政府は、オーダーしたワクチンが契約どおりに届くとでも思っているのだろうか。であれば脳天気すぎると私は思う。
つまらぬ議論に時間を使うより、さっさと国産ワクチン開発に全力をかたむけたらどうか。しかし日本には研究開発の蓄積がないといわざるを得ない。
その理由として、21世紀初頭文科系政治家らは、日本の大学の独立行政法人化を進め、ノーベル賞などの世界的実績がある研究や、社会的話題になった研究には重点研究として研究資金を提供してきたが、人類にとって必要な研究はなおざりにされた形跡がある。なにしろ世界最速のスーパーコンピュータの研究開発費だって当時の代議士から「世界で二番目じゃいけないのか」といわれた時代だった。感染症も当時流行していないのに研究資金が必要なのかとする理由で継続的な研究資金が充当されなかったのだろうか?。あるいは国立感染症センターがあるのでそっちの所管だと考えていたかのか?。
WEB(nippon.com)で自然科学分系論文本数(2016-18年の年平均、括弧はシェア)をみると、中国305,927(19.9%)、米国281,487(18.3%)、ドイツ67,041(4.4%)、日本64,874(4.2%)、また2018年の研究開発費でみれば米国60.7兆円、中国58.0兆円、日本17.9兆円と世界のトップからは、大いに遅れているのが現状だ。
専門的人材や開発ノウハウは、すぐには育たないし蓄積できないのである。経年的努力が必要になる。そんな文科系人間達の見通しを間違えたツケが今まわってきたのではなかろうか。ワクチン接種さえすれば、ただのインフルエンザなのである。
京都市
NikonDf,Carl Zeiss Planar50mm/F1.4T*ZF2
ISO200,露出補正0,f/5.6,1/13