「小説:小樽の翆」に登場した舞台を歩いてみた。最初は、小説の舞台をあるくなんて、何を気取ってんだかと思った。私は作家ではないが、自分でクリエイションした小説の舞台をあるく経験は、感性的な面白さがあることを発見した。
それは読者が小説の舞台を歩く経験とは異なり、小説を書いた人間にしかわからない感じ方だ。
翼君がアルバイトで管理している海沿いのコテージ、光凛さんとデートの場所でもある。小説のスケッチでは、建築の形はモダンにしてしまった。だが海沿いのテラスは描き忘れたから、今度小説では増築してしまおう。高校に進学した翼君と光凛さんが夜のテラスで、函館本線の列車の灯がチカチカと激しく通過するなかで、逢い引きをする場面にしようかなとイメージは膨らむ。
ここが美希姉ちゃんと彼氏の待ち合わせ場所だった小樽築港のマック。小説はWEB情報で描いたが、壁の位置が逆だった。それでも奥まった席が、落ち着いていて長居できそうであることには変わらない。
ここが翆が努めている総合病院だ。感染病棟もあり晃子さんや産婦人科の狸爺もいる。夜中に看護師仲間で夜の会話に花が咲いているかもしれない。
ここがアチキと翆の逢い引き場所だった神佛温泉の家族風呂。ここは筆者も実際に家族風呂を利用したから小説の通だ。もちろんここの経営者は、こんな小説を読むことはないだろうから、大いに逢い引きの場所に使わせてもらっている。
翆からことづかり正月のお餅を調達したツルヤも現在だ。ツルヤを舞台にしたストーリーか。老舗の若旦那の逢い引きかなぁー(笑)。
小春が、今年の春から通い出す菁園中学校もあった。後ろが小樽公園であり、眼下に町のランドスケープが広がる素晴らしい場所だ。えっ!、予想外に良い立地じゃん。これは、もっと小説に使えそうな場所だよ。街の明かりを背景にして小春とユウ君との逢い引きなんかよさげた。それに隣が小学校だったなんて知らなかったよ。小説に書きそびれた話だった。
明菜姉ちゃんは実際にある隣の画材屋へ出入りし、このコロンビア珈琲で700円のフルーツパフェをアチキに、おごってもらっていた。もちろこのブログでも正月すぎにスケッチしてアップさせている。実はここのプリンが、昔の家庭の味で素朴なおいしさがある。
もちろん翆の家もあるし、ツカモッチャン先生の家もあるけど、個人所有なので画像は遠慮しておこう。
そんな風に小説に登場した舞台は、文章とスケッチとでクリエイションしてきた私にとって独特の興味がある。私だけに意味づけられた風景といってもよいだろう。だから写真を撮っていても、漫然と眼についた風景を撮ったのとは異なり、個人的に意味づけられた面白さがあり、そんな風景に再開できた感動もある。
なるほど小説家というのは、クリエイティブをした人にしかわからない感性的な世界をひた隠しにしていたか、というのが発見である。そりゃ評論家だってわからんよな。通例は作家の内的世界と称して、立ち入れないのだが。
そんな感性にひたりたければ、人に読まれようと、読まれまいと、純文学であれ官能小説であれジャンルなどはなんでもよく、何よりも自分で文章を書き、スケッチを描き、クリエイションしてみることをオススメする。そうすると小説の舞台の先に、小説の登場人物の姿や生活を発見することができるだろう。
あっ、翆がいる、美希姉ちゃんも小春もいる、といった具合に登場人物達が、私に語りかけてくる。そんな親近感を持って街を眺めることができる。それは読者のように意識のなかで概念化された理解で訪ね歩くのとは異なり、相当のリアリティを持ってクリエイションをしてきた人間にしかわからない独特の感性をもって語りかけてくる。
2021年2月28日 小樽市
NikonDf,Carl Zeiss Distagon25mm/F2.8T*ZF
1)ISO450,露出補正0,f/11,1/1000
2)ISO2200,露出補正0,f/8,1/1000
3)ISO100,露出補正0,f/8,1/250
4)ISO160,露出補正0,f/8,1/250
5)ISO400,露出補正0,f/11,1/800
6)ISO280,露出補正0,f/8,1/250
7)ISO4000,露出補正0,f/4,1/80