ロバート・B・パーカー Robert B.Parkerのスペンサーシリーズ第30話です。
私立探偵スペンサーSpenser が相棒のホークHawkとともに、28年前の銀行強盗の殺人事件の真相を究明していく。
報酬は、被害者の娘が手土産に持参したクリスピー・クリームKrispy Kremeドーナッツ6個。
30年前の迷宮入り殺人事件を、無報酬で解決することに興味を惹かれるスペンサー。
事件へのFBIの関与。ギャングのボスからの脅迫。身に迫る危険。
そして、銀行強盗の背景の、読者がとても想像できなかった真相がスペンサーによって明らかにされる。
依頼者が望まなかった真相が解明されたが、真実を依頼者に伝えることはあるのだろうか。
物語が62シーンに区分され、読みやすい。
会話が面白い。面白いのですが、わからないことも多く、早川文庫で楽しみました。
菊池光さんの訳は、素晴らしいですね。
自分の語学力のなさももちろんですが、こんなに面白い本だったのかと強く惹かれます。
1か所誤訳かなと思われるとことがありました(23節)。
"Can you get it?"「手に入れることができるのか?」(スペンサー私立探偵)
"Classified."「秘密資料だ」(エプスタインFBI捜査官)
"Don't you have clearance?" 「あんたは閲覧資格を持っていないのか?」(スペンサー)
"Need-to-know basis,"Epstein said.「必知事項扱いだ」(エプスタイン)
"You need to know."「あんたは知る必要がある」(スペンサー)
スペンサーのシャレにもなっているneed to knowに引っかかったのだ思いますが、"Need-to-know basis, "は「情報適格性に基づいているから,(知る立場にない)」、すなわち「知る必要がある人ではないからだ」とした方がいいと思います。
ピリオドではなくカンマだし。
情報は知る必要がある人に伝え、知る必要のない人には伝えないのがneed to knowの原則です。「必知事項扱いだ」とすると、必ず知っていなければならない事項となり、逆になってしまい、FBI捜査官が資料を知らないとする理由にはなりません。