ニチニチソウから、抗がん作用のあるビンクリスチンvincristineを発見・開発した米国の大手製薬会社イーライ・リリー社は、1963年に抗がん剤を発売した。
ビンクリスチンは、小児白血病に効果があり、それまで死亡率95%(生存率5%)だったのが、生存率84%まで引き上げた。
1985年には年間売り上げが1億ドルに達したそうです。
出典:http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/event/pdf/100904gakujyutu/session6_02_m_watanabe.pdf
ニチニチソウはマダガスカル島が原産地ですが、このような巨大な富を生む生物遺伝資源が技術を持つ先進国だけに享受され、搾取された原産国には利益配分されていないことが問題になっていました。
名古屋で開催されていた生物多様性条約の締約国会議COP10で、「遺伝資源の利用と利益配分(ABS=Access and Benefit Sharing)に関する名古屋議定書」が採択されました。
発効までには、日本を含め50か国超の加盟国・地域の批准が必要ですが、大きな一歩を踏み出したといえます。
議定書を過去にさかのぼって適用すべきという途上国の主張は認められませんでしたが、今後も、新薬の開発には生物遺伝資源は欠かせない重要な役割をもっており、資源を持つ国と、資源を利用する国とが、公正で衡平な利益配分ができる国際的なルールができたことは、開催国として嬉しいものです。
気候変動枠組条約における「京都議定書」でKYOTOが有名になったように、NAGOYAが世界に知られるよう、日本の努力や取り組みが欠かせないですね。
「薬事日報」より
HEADLINE NEWS 2010年11月2日 (火)
【COP10】ABSに関する名古屋議定書を採択
生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)は、「遺伝資源の利用と利益配分」(ABS)に関する名古屋議定書を採択した。来年2月以降の署名開放、国会承認などを経て、50超の加盟国・地域が批准すれば、90日後に発効する。
規制対象、不正取得の防止、遡及適用をめぐり、先進国と途上国の溝は終盤まで埋まらず、松本龍環境相が議長案を示して政治決着に持ち込み、反対意見を表明する国があったものの、10月30日未明に全会一致に漕ぎ着けた。
議定書の骨子は次の通り。
◇第1条 目的
遺伝資源の利用から生じた利益を公正かつ衡平に配分することによって、生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する。
◇第2条 用語
「遺伝資源の利用」とは、バイオ・テクノロジーの適用を含む、遺伝資源の遺伝的、生物化学的な構成に係る研究開発の実施を意味する。
◇第3条 範囲
この議定書は、生物多様性条約の範囲の遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的知識並びにそれらの利用により生じる利益に適用する。
◇第4条 公正かつ衡平な利益配分
遺伝資源及びそれに関連する伝統的知識の利用により生じる利益は、相互合意条件に基づき公正かつ衡平に配分される。各締結国は、このために適切な場合には、立法上、行政上、政策上の措置を実施する。
◇第5条 アクセス
アクセスに係る事前同意を求める各締結国は、適切な場合には、ABSに係る要求の法的確実性、明確性、透明性の確保等のため、立法上、行政上、政策上必要な措置を実施する。
◇第6条 特別の考慮
(a)非商業目的の研究に係るアクセスへの簡易な措置を含め、研究を振興し促進。
(b)人、動植物の健康に脅威又は損害を与える現実の又は差し迫った緊急事態に対して適切に配慮。遺伝資源への迅速なアクセス、利益配分の必要性を考慮。
◇第7条の2 利益配分のための地球多国間メカニズム
各締結国は、国境を跨ぐ遺伝資源の場合、事前同意を得ることができない場合に、公正かつ衡平な利益配分を実現するための地球多国間メカニズムの必要性とモダリティーを検討する。
◇第12条 ABSに係る国内法又は規制に関する厳守
各締結国は、自国内で利用される遺伝資源が、他国のABS国内法・規制で求められているとおり、事前同意に従ってアクセスされ、相互合意条件が締結されていることを促進するために、適当で効果的で均衡のとれた措置を実施する。
◇第13条 遺伝資源の利用に係る監視
各締結国は、適当な場合には、遺伝資源の利用に関する監視のために一つ以上のチェックポイントを指定する。チェックポイントでは、状況に応じて利用者に情報提供を求め、研究、開発、商品化などの各段階での情報収集に関する機能を持つ。