ハリーポッターシリーズ第三話「ハリーポッターとアズカバンの囚人」について、原作と映画の違うところ、第二話に引き続き紹介します。ネタバレにならないようになるべく配慮しています。
■怪物的な怪物の本を贈ったのはハグリッド
映画では、漏れ鍋の宿屋でハリーは新学年で使用する教科書一式を魔法省大臣からもらう。その中に、生き物のように部屋を動き回り、ハリーに噛み付こうとするThe Monster Book of Monsters 「怪物的な怪物の本」がある。
原作では、この本は新学期から魔法生物飼育学の授業を担当することになったハグリッドが、ハリーに誕生日プレゼントとしてあげたもので、ダーズリー家のハリーの部屋でハリーに噛み付こうとする。また教科書一式は、漏れ鍋に2週間滞在したハリーが自分のお金で揃えている。
■ウィーズリー一家のエジプトでの集合写真
新聞の懸賞賞金でエジプト旅行をしたウィーズリー家の集合写真が、新聞に掲載された。この新聞は誕生日プレゼントと一緒にロンからハリーに送られる。アズカバンに12年間収監されていたシリウス・ブラックも偶然この新聞を見て、あるものを発見して脱獄する。
映画では、このことに触れていない。
■ブラックが罪を犯した時の様子を聞いたのは、三人
「忍びの地図」でホグズミードヘ出かけたハリーは、ロンやハーマイオニーと合流し「三本の箒」というパブで、マクゴナガル教授、ファッジ魔法省大臣、ハグリッドたちの会話を偶然耳にする。シリウス・ブラックが、親友のジェームス・ポッター(ハリーの父親)を裏切ってヴォルデモートにポッター夫妻の居場所を教えたため、ポッター夫妻がヴォルデモートに殺されたこと、シリウスを追いかけてきた仲間のピーター・ぺティグリューを指一本だけ残して粉々に吹き飛ばし高笑いをしてつかまりアズカバンに収監されたことなどを聞く。
映画では、ハリーだけが透明マントで店の中に入り、この話を聞いている。
■エクスペクト・パトローナム
ルーピン先生とデメンターを倒す呪文の特訓をするが、呪文に必要な「楽しかったことの思い出」は、原作では①初めて箒に乗った瞬間、②グリフィンドールが寮対抗戦で優勝したとき、③自分が魔法使いとわかりダーズリー家を出て学校に行けるとわかった瞬間、である。
映画では、①初めて箒に乗った瞬間、②父と母の顔、となっている。映画の方が説得力がある。
■「忍びの地図」の作者
ホグワーツ校周辺の詳細な地図で、GPSのように各人の居場所を映し出す不思議なThe Marauders's Map「忍びの地図」の作者は、ムーニー(Moony:月のような)、ワームテール(Wormtail:虫の尾)、パッドフット(Padfoot:肉趾)、プロングス(Prongs:角)となっている。
映画ではそれぞれが一体誰なのか紹介されていないが、原作では、ムーニーはルーピン先生、ワームテールはピーター・ペティギュー、パッドフットはシリウス・ブラック、プロングスはジェームス・ポッターである。このあだ名には重要な意味がある。
■スネイプの説教
保護者であるダーズリーから許可をもらえずホグズミードに行けないハリーが、ハーマイオニーの制止にもかかわらず「忍びの地図」で再び秘密のトンネルでホグズミードに行くが、スネイプ先生に疑われる。「シリウス・ブラックからハリー・ポッターを守るために、魔法省大臣をはじめ皆がハリーの安全を心配しているのにもかかわらず、“有名な”ハリー・ポッターは自分自身が法律と考え、行きたいところに出かけ、どんな結果を招くか考えてもいない。」と説教する。
しかし、映画では、ハリーを説教しているのはルーピン先生になっている。「ハリーの命は両親の犠牲の賜物なのに、身勝手な行動をし、「忍びの地図」をシリウスに見つけられたらハリーの居所がたちまちわかってしまう。かばってあげられない。」と説教する。
■スネイプ先生がハリーを恨む理由
原作では、ポッターに対するスネイプの恨みが明かされる。クィディッチのヒーローであるジェームスを妬んでいた。ハリーの規則破りの行動やクィディッチのヒーローぶりも父親にそっくり。説教が高じて、命の恩人であるはずのジェームスの悪口を言うスネイプに怒ったハリーに対し、事実は、ジェームスたちが悪ふざけをして死に直面したスネイプを助けただけで、勇敢なことなどではない、と知らされる。この悪ふざけは、ルーピンに関することだと後に判明する。
映画では触れられていない。
■暴れ柳の下にあった「叫びの屋敷」
ロンが黒い犬に暴れ柳の根元の穴に引きずり込まれ、その先にある部屋が「叫びの屋敷」。暴れ柳はルーピンがホグワーツ校に入学した年に植えられたもので、ルーピンのために作られた屋敷だった。暴れ柳は近づくものを枝が暴れて遠ざけるが、入り口に柳がおとなしくなるスイッチみたいなものがある。ジェームスたち(実際はシリウス)がスネイプにした悪ふざけとはこのスイッチの操作方法をスネイプに教えたことで、中に入ったスネイプが死にそうになったというもの。
映画には、この部分は出てこない。
■5人は、同級生
ルーピン先生により、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティギュー、シリウス・ブラック、ジェームス・ポッター及びセブルス・スネイプの5人は、ホグワーツ校の同級生だと明かされる。
映画では、こうした背景は出てこない。
■ピーター・ペティギュー
シリウス・ブラックの魔法によって指一本だけ残して粉々に吹き飛ばされたピーター・ペティギューが、「忍びの地図」に現れ、ホグワーツ校内の廊下でハリーに向かってくるというシーンが、伏線として、映画に出てくる。
原作には、そのような場面は無い。伏線としては、漏れ鍋でエジプトから帰ってから調子が悪いスキャバーズを魔法動物ペットショップで見てもらう場面がある。
■ピーター・ペティギューの指
原作では、彼が人差し指を失っており、中指で(ブラックを)指しているのをハリーは見た(Harry saw that he used his middle finger,because his index was missing.)とある。また、ファッジ魔法省大臣の話では、ピーターがシリウスを追い詰め魔法を掛けようと杖を取り出したときに、シリウスの方が早く杖を振りかざし、ピーターは指一本を残して粉々に吹き飛んだ、とある。
おそらく、杖を持っていたため、利き手の人差し指だけが残ったという意味だと想像するが、映画では左手の薬指が失われていた。
もし、故意に切断するのなら、利き手の人差し指は不可能で、左手の薬指が妥当と言うことなのだろう。その点は映画の方に合理性があるが、シリウスとの戦いで残った指がなぜ薬指なのか説明が難しく、原作の方に合理性がある。
■ハーマイオニーの活躍
真相解明に向けて、ルーピンとシリウスにハーマイオニーが的確な質問をするが、映画では出てこない。
その代わり、自分に向かって石を投げてダンブルドアたちに気づくよう合図したり、狼男に襲われそうになった時に鳴き声をあげて窮地を救ったりと、ハーマイオニーが活躍する場面が映画では出てくる。
■バックビークに乗る3人の順番
ハリー、ハーマイオニー、シリウスの3人がバックビークの背中に乗る順番は、原作ではハリーたちがバックビークから降りなかったため、前からハリー、ハーマイオニーの順で、一番後ろにシリウスがまたがっている。
映画では、二人とも一旦バックビークから下りたので、乗るときはハーマイオニーを先頭に、シリウス、ハリーの順となっている。
■ハーマイオニーを褒める
シリウスがバックビークで立ち去るときに、「ハリー、君は本当にジェームスの息子だ。」とハリーに対して言う。
映画では、さらに、ハーマイオニーに対しても「君は若いのに素晴らしい魔女だ。」と褒める部分が追加されている。
■ファイアボルト
漏れ鍋に滞在中、ハリーはクィディッチ専門店で最高級の箒であるファイアボルトに見とれる。ワールドカップに出場するアイルランドの代表チームが注文したと言うものだ。その後、ハッフルパフ戦で暴れ柳により粉砕されたニンバス2000の代わりに、見知らぬ人からファイアボルトをプレゼントされ、レーベンクロー戦及びスリザリン戦でファイアボルトを使ったハリーは大活躍する。
映画では、ハッフルパフ戦は出てくるが、その他の試合はなく、ファイアボルトをプレゼントされるところで終わっている。
原作では、その後の手紙でファイアボルトの贈り主が明らかになる。
■そのほか原作の見どころ
映画では登場人物の行動の背景説明までされないことが多いが、原作には緻密に計算された背景があり、たくさんの見どころがあります。
・「忍びの地図」を作ったのはなぜか。
・ルーピンの秘密と、ジェームス、シリウス、ピーターたちの友情とセベルス(スネイプ)
・シリウスが恐怖の収容所アズカバンに12年間も耐えられた理由
・姿を見られてはいけないのに、姿を見られてしまったこと
もし、映画だけの方なら、原作も読んでみてください。
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第7話ハリーポッター原作と映画の違い「死の秘宝 PART2」