某駅の発車時刻が近付き… 私はクラッチペダルを踏んでエンジンスタート、ブレーキペダルを踏んで駐車ブレーキを解除、車内案内をしながらギアを入れた。
その間にも改札口の方から次々と走ってくる乗客… 発車時刻を過ぎても何人かが駆け込んでくる。しかし、バス乗り場は歩道を兼ねているので、バスの横を素通りして行く人たちもいる。
だから、走ってくる人の姿がなくなっても、歩いてくる人の姿はパラパラと続くのである。そこで私は“最終確認”のつもりで「○○行き、発車します」と車外スピーカーを通して呼び掛けた。
そして、歩いている人に動きの変化が見られなければ、前扉を閉めて発車する… の、だ、が… その時、歩いてきた若い男が、前扉の外で立ち止まったのである。私が再び前扉を開けると、男は無言で乗り込んでゆっくりと着席… それは、私の嫌いな“怪人・耳栓男”だった。
怪人・耳栓男とは… 周囲との繋がりを拒絶するかのように耳栓(ヘッドホン、イヤホン)をして、自分の好きな音楽だけを聴きながら行動する。周囲で何があっても、他人に迷惑を掛けていても、耳栓をはずすことがない自己チュー野郎のことである。
あぁ、飛び蹴りでも食らわせてやりたいよ! 最近、何かと世間を騒がせている職業だから、もちろん私は顔を隠して… ♪ドライバージャンプ! ドライバーキック! 仮面ドライバー、仮面ドライバー、ドライバー、ドライバァ~! だけど、名札をはずし忘れてバレちゃうんだなぁ~。ハハハ…