あるバス停で一人のおばさんが乗った。そして発車しようとしたところ、前方から歩道を走ってくるおじさんを発見した。私は「まぁ、よくあることだし… そんなに時間もかからないし…」と思って待つことにした。
が、その次の瞬間、おじさんが後方を指差したのである。私が促されるままそちらを見ると、曲がり角から一人のお婆さんが現れたのであった… あらま、そういうこと!? どうやら、おじさんの母親のようで…
30~40秒くらい経った頃… お婆さんがバス停に到着すると同時に、おじさんが前扉の外で「このバス、◎◎へ行くよね?」と言ったのである。鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた私は「いえ… ◎◎へは行かないんですよぉ…」と抑えた声で答えるのが精一杯だった。
おじさんが「えっ!? 行かないの? ホントに???」と私に食い下がっている横で、お婆さんは「このバスは◆◆から△△の方へ曲がっちゃうから…」とおじさんに教えていた。ま、ま、ま… おじさんに悪気はないからいいんだけど…
このバス停がある場所もそうだが、様々な路線が入り乱れている区間では「☆☆へ行きますか?」という質問が多い。そりゃそうだ、運転士が即答できない場合もあるくらいで… 常に運行カードを見ながら「え~っと… 行きま… すね!」と答えている。運転士はずっと同じ路線を走っているわけではないので、「さっきは☆☆を通らなかったけど、今度は☆☆を通る(または、その逆パターン)」ということが多いからである。
また、某駅発某所行きのバスには、経由の異なる4つの路線があり、その中の1つを運転している時に、途中のバス停で行き先案内をしていたのだが… バス停を3つも4つも言っているうちに、乗客は無言で着席完了していた… 大半の乗客は“そんなこと分かっている”からである。
だから、この路線では「お待たせしました」とだけ言って、行き先や経由については“聞かれたら答える”というクールなスタイル(?)になることが多い。しかし、それでは運転士監視員(モニター)のチェックが入り、点数も悪くなってしまうんだよなぁ… ま、いいんだけど…