始発停から2人だけ乗せて出発した。あるバス停で、車椅子の人を含めた3人の乗客が待っていた。手順通りに車椅子の乗車&固定をして、続いて他の人たちの乗車扱いをした。
その後、途中で一人が降りて一人が乗っただけで、ほとんどのバス停を通過しているうちに、車椅子の人が降りるバス停に到着した。私は駐車ブレーキ&エンジンストップをしてから、車椅子の人のところへ歩み寄った。
すると、車椅子の斜め後ろ… 通路の真ん中に何かが落ちているのを発見した。私は「落とし物? それともゴミ?」と思いながら、その小さなビニール袋を… 拾い上げる前に気が付いた。それは私の“仕事用小銭入れの一つ”だったのである。どうやら、車椅子の固定中に、腰に付けたカバンからこぼれ落ちたようで…
私は「乗客は誰も気付いていないのか? 見て見ぬ振りをしているのか? “これは私のです”と言った方がいいのか? しかし、証拠がないから意味がない! これが普通の落とし物だったら、いちいち「保管します」なんて言わないし…」などとゴチャゴチャ考えながら、それを右手の中に握り込んでいた。
そして、そのまま車椅子の固定器具を外し、スロープを出して、車椅子の人を見送りながら… 「そうだ! こんな小汚いビニール袋に現金が入っているなんて誰も思わないよ! だから、みんなゴミだと思って拾いもせず、何も言わず… それどころか“運転士さん、ちゃんとゴミを拾ってるわ”なんて思われたりして!?」と自分を納得させた私だった…