虚無僧で立っていると、目の前をウロウロ、
行ったり来たりしている男女が何人もいる。
「アンケートお願いします」一人で歩いて
いる若者を狙って近づく。断られても、断
られても笑顔で近づく。すると、まれに引
っかかる人がいる。これを毎日7時間やって
いる。すごい、虚無僧より大変な仕事だ。
私もすぐ引っかかる方だ。「パソコン教室、
いつでも好きな時に、マンツーマンで」と
いうので申込み、70万のローン契約をした。
行ってみると英会話とセットで、時間も
ほとんどふさがっていて取れない。
結局3回行ったきりでパーとなった。もう
30年以上も前の話。
通行人を狙って、この手のキャッチセールス
やスカウト、テッシュ配り、名古屋駅前の
路上は花ざかりだ。だが最近はもう誰も私に
声をかけてくれなくなった。
物が売れない、お客が来ないと嘆く店が多い中で、繁盛している店とは。
他と同じことをやっていてはダメ。客の心をつかむ接客。商品情報に
精通することなど、当然、当たり前のこと。
A子さんは、靴は 東京のD店まで毎年買いに行く。
1年に一度の客でも、店員は「〇〇さん、いらっしゃいませ」と
名前はもちろん、A子さんの足のサイズも記憶しているのだ。
そして新しい流行のデザインの中から、A子さんにピッタリの
靴を出してきて勧めてくる。「これがいい」と自分で選んでも
「それは合いません」と。履いてみると確かに合わない。
服は、J店。こちらも同じ。今まで売った服を全部記憶している。
「〇〇さんには、これがピッタリですよ」と服を選んでくれる。
「こっちがいい」と手にとっても、「ダメです。似合いません」、
「サイズが合いません」とはっきり云う。着てみるとやっぱり似合わない。
もっとすごいのは、「一昨年買われたジャケットに、合わせられますよ」と
今まで買った服を全部覚えていて、それとコーディネートさせることだ。
これがプロの販売員だ。だからわざわざ東京まで買いに行く価値がある。
それに比べて、どうしようもない販売員が多い。まずお客の方を見ていない。
商品を熟知していない。聞かれたことに答えられない。
それでは、売れない。客足も離れて当然。プロの条件は、“記憶力”。