『名古屋叢書』 第18巻 随筆編 (1)
P.168 「塩尻拾遺」 巻38
むかし「暮露(ぼろ)」といふ 一種の僧有りし。「むまひじり」とも云ひし。
「職人尽」の「歌合46番」」に見へたり。
右月の歌
「法の月 ひろくすまして武蔵野に おきいる暮露の草の床かな」
判(選者=審査員)に云ふ。「暮露の心 月いかばかりの法の光をかひろめ侍るべき。
信仰もなくおぼゆ」
「ぼろぼろの草子」あり。阿弥陀坊、虚空坊など云ひし者のその初めと聞こゆ。
「梵論字・漢字」などと云う者を その初めと云へり。後世の「こも僧」、この遺風
にやと 云ふ人あり。そのかみ「説教師・法師・陰陽師・田楽法師」など云ふも
皆僧家のせし事なり。これ等、妻を携え、肉をくらひ、無慙のふるまひせし者ども
なりとぞ。