『名古屋叢書』 第18巻 随筆編 (1)
P.74 「塩尻拾遺」 巻17
一路居士は一休と同時の人なり
身をかくす庵の軒の朽ちぬれば 生えても苔の下にこそ住め
月は見む月には見えし ながらへて 浮世をめぐる影もはづかし
これ一路の歌なり。
ある時、一休 問ひて曰く
「万法 路(みち)なり、如何なるか是れ 一路」
一路答えて
「万事休す、如何なるか是れ 一休」
と言ひしとぞ。泉州石津の上市村にかくれし跡ありとかや。
或る人云ふ。「一路は仁和寺の門跡、還俗の人なり」と。
その本名を知らず。