「寺田 寅彦」は 1878年(明治11)生。1935年(昭和10)歿。
「随筆家」として知られていますが、専門は物理学。
その「理学博士号」を取得した学位論文が、なんと
「尺八の音響学的研究」です。ネットでも見れました。
しかし全文英文で、難しい計算式ばかり。私など
チンプンカンプン。それが 1908年(明治41年)の
ことというから驚きます。
そして、昭和3年に「大阪朝日新聞」に寄稿した一文、
『日本楽器の名称』も驚きです。
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●【三味線】 三弦、三線(さんしん)、三皮前(じゃみせん)、
三びせんなどいろいろの名がある。琉球から伝わった「蛇皮線
(じゃびせん)」を日本人の手で作りかえたものらしい。
シナの楽器の「阮咸(げんかん)」と三味線とが同一だとか。
この「阮咸」をシナ音で読むと「ジャンシェン」となるのである。
また元(げん)の時代、三絃のことを「コフジ、コフシ、クヮフシ、
コハシ」など称していた。それに類似の名は、ヨーロッパ、アジア、
アフリカ、南洋のところどころに散在している。たとえば、
トルコの「コプズ」、ルーマニアの「コブサ、コブズ」。
ロシヤ、ハンガリーの「コボズ」などがある。シベリアの
一地方では「コムス」という。(以下、次々と列挙)
●【尺八】 シナの「洞簫(どうしょう)、一節切(ひとよぎり)、尺八」、
この三つが関係のあるらしい。『源氏物語』や『続世継』などに
「尺八」の名があり、さらに「聖徳太子が尺八を吹かれた」という
話がある。「長さが一尺八寸あるいは八分だから尺八」というのは
いかにももっともらしいが、これには充分疑う余地がある。
「唐書」に「尺八を十二本作ったが長さがいろいろある」と
書いてある。正倉院の尺八は「一尺一寸」以下八種ある。
オランダ領インドの島に「シグムバワ」という笛があり、
サモアに「シヴァオフェ」という竹笛がある。ペルシアの
笛に「シャク」というのがある。またトロンボーンの類で
「シャグバット(英)」「サクビュト(仏)」「サカブケ(西)」
なども事によると何か縁があるかもしれない。
「ヒトヨギリ」は「一節切」に相違ないだろうが、これが
「ヒチリキ」の子音転換とも見られるのがおもしろい。
ポーランドには「ピスチャルカ」と称する六孔の縦笛があるが、
名前とともに「ヒチリキ」に類するのが不思議である。
ソロモン群島のある島に存する竹製の縦笛に「ププホル」と
称するのがある。このププホルと『徒然草』の「ボロボロ」とを
並べて考えてみるとだれでもちょっと微笑を禁じ難いであろう。
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ととと・・と。 今日でも知られざる情報が満載。すでに、昭和3年に
「『1尺8寸の長さから尺八』というのは疑わしい」と疑問を
呈しているのだ。今日の「日本音楽学界」は、寺田寅彦から
後退していると言わざるを得ないのです。
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