上野堅實『尺八の歴史』、西川秀利『尺八の研究』は
尺八の起源について、ありとあらゆる史料を網羅し、
実に詳細に論じている。その研究内容は驚くばかりだ。
しかし、お二人とも「尺八はその長さが1尺8寸なので
“尺八”と名づけられた」ということに固執しており、
その前提で論じている。
果たしてそうだろうか。そもそも、古代にそのような
記述は存在しないのだ。
根拠となっている出典は、『旧唐書』に「呂才という者が
貞観3(629)年、12律に対応する12本の尺八を作った」
というもの。
つまり「ドレミファソラシに♭(フラット)5つを足した12音
に対応して長短12本の尺八を作った」というのだから、
長さに関係なく、すべて「尺八」なのであって、「1尺8寸
を基準とする」ということは書かれていないのだ。
私も詩吟の伴奏には1尺3寸の「G管」から2尺4寸の
「A管」まで11本用意している。尺八は「1尺8寸」と
思い込んでいる人たちは、これをみて驚かれる。短い
のも長いのもすべて「尺八」だと云うと、誰もが「1尺8寸
だから “尺八”」という常識に疑いを持つ。
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