12月30日(金)深夜1:59 -4:25 中京テレビで、映画『悪人』を観る。
芥川賞作家・吉田修一のベストセラー小説を、妻夫木聡と深津絵里の主演で映画化したミステリードラマ。
ふとしたことから殺人者となってしまった不器用な青年と、そんな男と孤独の中で出会い、許されぬ恋に溺れた女が繰り広げる逃避行の顛末を、事件を取り巻く人々の人間模様とともに綴る。
モントリオール映画祭で深津絵里が主演女優賞を獲得したという映画だ。
タイトルからの先入観で、初めは、金髪でだらしない格好の今時の若者の
「祐一」を、「こいつが悪人か」と決め付けて見ていた。
でも、これもまた今時の若い女 「佳乃」 を殺すに至った経緯を知れば、「どっちが悪い」と思えてくる。
最初に佳乃を車外に突き落とした大学生の圭吾も、今時の若者で許せない。
純朴な一市民だった被害者の父親(柄本明)も、圭吾に殺意を見せる。こうして誰しもが “悪人”になりうる
ことを、見せつけてくれた。
私自身も、切れやすい性格だったから、過去一度や二度はそんな場面に出会ったことはある。
その都度、親に降りかかる多大な迷惑を思って、思い留まった。
映画でも、祖母の樹木稀林がマズゴミの格好の餌食にされる。この映画で泣けたのは、バスの運転手が
マスコミの連中を一喝して追い払い、「あんたが悪いんじゃない、しっかりしろよ」と励ます。
そしてその後、去って行くバスに向かって樹木稀林が深々と頭を下げる。
あのシーンだった。さすが樹木稀林、後ろ姿だけで泣かせる。「主演女優賞」なら樹木稀林にあげたいくらいだ。
出会い系サイト、過疎化、悪徳商法、介護問題、育児放棄など、さまざまな社会問題をからめ、現代社会の
閉塞感に苛まれる若者の孤独を描いてくれた。
映画とは、現実離れした虚構の世界を描くものと思っていたが、ごく身近にいつでも起こりうる課題に、ぞっとさせられる映画だった。
「真剣に命をかけて守りたい人がいるか」という、柄本明のセリフが、この映画のテーマ(主題)だったか。