映画『悪人』は、いろいろ考えさせられた。
樹木稀林が、入院中の夫の介護に家を出ると、
マスコミの容赦ない攻撃にさらされる。バスに
乗ろうとしても入り口まで詰め寄られる。
その時、バスの運転手が一喝する。「バスの
中で取材は困る!」と、すごい迫力に、さしもの
マズゴミもたじろぐ。「バスの運転手にも迷惑を
かけた」と気まずい思いをしながらも気丈にふる
まう樹木稀林。そしてバスを降りた時、運転士手が
声をかける。「ばぁさん、あんたは悪くないんだから、
しっかりしろよ」と。
走り去るバスに樹木稀林が深々と頭を下げる。
あのシーンが泣けた。あの運転手の言葉「あんたは
悪くない」は、樹木稀林にではなく、このストーリー
の登場人物すべてに投げかけられた言葉のようだ。
「あんたは悪くない」がこの『映画』のテーマだったか
と気づかせてくれるほどインパクトがあった。チョっと
しか登場しない運転手までが、存在感のあるすごい
役者を起用していたわけだ。