名所巡りに欠かせないデジカメとスマホをポケットに押し込み
肌寒い早朝に神戸市須磨区の板宿八幡神社を参詣するために
神戸高速線の大開駅から3駅隣の板宿駅に足を運びました。
現在の板宿八幡神社は、
おらが町の鎮守さん的な小さな神社ではあるのですが
ある伝説と関係する神社なので
前々から一度は参詣しておきたかったんですよね。
神戸 板宿駅『カルタゴ』
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現在のチュニジアにあたる場所にあった
北アフリカの古代都市『カルタゴ』は、
紀元前3世紀にローマ軍によって破壊されましたが
後年再建されて美しい港湾都市として栄えました。
彫刻作品『カルタゴ』は、阪神淡路大震災で
大きな被害を受けた神戸がカルタゴのように
力強く再建し栄えることを願って建立されました。
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この彫刻作品『カルタゴ』は、1996年(平成8年)に
天野祐夫氏によって製作された作品とのことで
象のような亀のような奇妙な生物の背中には、
これまた奇妙な建物のようなものが乗っかっています。
芸術感性が溢れているとは言えない私が見て思うのは
自由奔放に造形された彫刻作品『カルタゴ』を
今回の様に通りすがりに目に留まれば
少しは足を止めて観賞するかと思いますが、
この彫刻作品を目当てに板宿駅まで足を運ぼうとまでは思えない。
しかし見る人が違えばまた違った想いを持つもので
2002年(平成14年)の日韓ワールドカップが行われた際に
この彫刻作品の存在を耳にしたチュニジアの大使が
この作品を観賞するためにわざわざ訪れたらしい。
震災遺構「止まった時計」
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神戸市須磨区飛松町のプレハブの美容院
『ビューティーサロン西薗』の店前の鉄塔には
阪神淡路大震災の衝撃で時を刻むのを止めた時計が
今もそのままの状態で残されています。
外側から見た分には何一つ変化がないのに
内部が破壊されたことで時を刻むのを止めた時計。
大震災の揺れの衝撃ってどんなんかなと思って
帰宅後に自分の部屋の安い壁かけ時計を外して
もう両腕を思いっ切り激しく振り続けてみたんですが
時計は何事もなかったように時を刻み続けていました。
こっちは両腕はパンパン、息は絶え絶え、
心臓の鼓動が停止する一歩手前。危なかった。
神戸 板宿八幡神社 参道
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この石段は、板宿八幡神社まで続く参道の始まり。
まだ午前の早い時間ではあるのですが
私の後から参道の石段を一人、また一人と
足取り軽く登って来ては追い抜いていきます。
京都の錦天満宮を参拝した際にも、
朝早くから地元の人らしき人達が次々に参拝に訪れて
境内を後にしていく光景を見ましたが
板宿八幡神社の神様も地元の住民に愛されているようです。
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先ほどの真っすぐ伸びる石段を登り切ったら
今度は右にぐねっと曲がってさらに続きます。
大宰府に流された菅原道真公が九州へ向かう途中、
須磨の風波が高く舟待ちをするために
現在の神社境内に里人達が板で作った簡単な宿を用意して
道真公をもてなしたことが板宿の地名の由来とされています。
わざわざ石段を登った所に簡易の宿を作るとは思えないので
おそらくですが平安時代の頃は、石段参道の始まりの辺り一帯は、
板宿八幡神社の境内だったと思うんですよね。
なので簡易の宿を用意したのは石段の下だと思うんですよね。
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この真っすぐ長い石段を登り切ると雪国じゃなくて
目的地の板宿八幡神社の鳥居が現れた。
なんてことを期待して、おっちらおっちらと登ります。
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901年、菅原道真公は、無実の罪を着せられたことで
平安京から大宰府へと左遷されることになり
道真公の紅梅御殿の庭木で特に愛でていた
梅の木、桜の木、松の木との別れを惜しみます。
道真公を慕う庭木の桜は、
悲しみのあまりにみるみるうちに枯れてしまいましたが
梅と松は、道真公の後を追って空を飛びます。
松は、途中で力尽きて現在の神戸市須磨区板宿町の丘に降りて
そこに根を下ろしました。『飛松伝説』
梅は、道真公の暮らす大宰府まで見事に飛んで
その地に降り立ちました。『飛梅伝説』
参道脇の千両の木
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903年に菅原道真公は、大宰府で亡くなったその後、
909年に無実の罪で追いやった主犯格の藤原時平が死去し、
京都のあちこちで落雷が多発します。
京都中が落雷に見舞われるなかで
不思議と道真公の邸宅があった京都桑原町だけが
落雷の被害に遭わなかったので
京都の人々は、我が所に落雷が落ちないようにと
『くわばら くわばら』とおまじないを唱えました。
これらの災いは、
道真公の怨念による祟りだとの噂が広まるなかで
京都御所の清涼殿に落雷した際に
菅原道真公の左遷に暗躍した二人が死亡。
もうこうなると京都の人々の間で単なる噂であったものが
噂の域を超えて菅原道真公の祟りであると確定化し、
947年、朝廷の命によって道真公の魂を鎮めるために
京都の北野の地に道真公を祀る社殿を造営しました。
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菅原道真公が神様として祀られたことに伴い
神秘的な伝承や伝説が色々と語られることになり
飛梅伝説もその一つです。
普通に考えれば、道真公の屋敷の梅の木が一夜にして
大宰府まで飛んでったなんて有り得るはずが無いので
道真公の神秘性を高めるための
誰かの創り話でしかないとなるのですが、
飛梅伝説が本当の話だとして考えてみると
誰かの手によって大宰府の道真公の元に
紅梅御殿の梅と松の木が急いで運ばれたことを
飛んでったと言い換えられたとすると
途端に伝説から神秘性が消えて現実味が帯びてきます。
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現在の板宿八幡神社は、
境内の敷地は広くはないし、美しい庭園が有る訳でもなく、
眼を見張る凄い社殿がある訳でもなく、
参詣するためには長く続く石段を登らなくてはなりません。
そんな板宿八幡神社を一度は参詣しておきたかった理由は、
そうです。そうなんです。飛松伝説の場所なんですよね。
板宿八幡神社
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ようやく着いたあ。着きました。
何でまた空を飛んだ松が力尽きて根を下ろしたのが
ここ板宿八幡神社だとされたのか。
神戸市の三大神社とされている
長田神社、湊川神社、生田神社のどれかではなくて
板宿八幡神社だったのには、なんか理由がありそうですが
何でもかんでも調べ上げずに分からないままにしておくのも
神秘性が残って面白い。
私が勝手に思うに世話になった里人らにお礼にと
京都から運んでいた松の木の苗木か種、
あるいは一部を贈答したのかなと。
板宿八幡神社 鳥居
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以前に写真で見た鳥居は白い石の鳥居でしたが
朱色の鳥居に代わっていました。
おそらくですが大震災により旧鳥居は倒壊し壊れたので
新しい鳥居が建立されたのだと思われるのですが
間違っていたらゴメンやっしゃのゴメンくさい。
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板宿八幡神社 社務所
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この建物が社務所なのか、授与所なのか、参集殿なのか、
おそらく3つの役割を果たす建物かと。
社務所ー神社関係の事務、御祈祷の受付やお札等の準備を行う施設。
授与所ー参拝者にお札やお守り等を頒布する施設。
参集殿ー氏子の接待や会合等に使用される施設。
板宿八幡神社 飛松天神社
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飛松とされる松の木は、高さ30mもあったとされていて
紀淡海峡を渡る舟人は、飛松を目印にして針路を定めていたと
1701年の書物に書き残されているようです。
しかし、大正時代に数回の落雷にあったことで飛松は枯死。
現在は、飛松の切株がこの天神社に残されています。
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伝説の観点から考えると
天神様を慕って空を飛んでまで後を追いかけた松の木が
落雷にあって枯死するって何で?
天神様って京都中に落雷を落としまくった怖い神様なので
途中で力尽きた松を懲らしめたら、やり過ぎたって感じ?
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菅原道真公に参拝するのではなくて
空を飛んで道真公の後を追いかけた松の木に参拝するのも
何か変な気もするし、
飛松の精霊が私の願いを道真公へと届ける途中で
またまた力尽きたりするかもと不安も少しありますが
私の想い天まで届けと参拝。
そして天神社に鎮座する飛松と御対面です。
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この時、菅原道真公の伝説に触れている感じがして
なんかこう身体が少し震えるような感覚があるのは
道真公が放った優しく緩い電撃を感じているのかもね。
板宿八幡神社 手水舎
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ちいさな手水舎の手水鉢と龍の彫刻。
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板宿八幡神社 拝殿
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午前中の早い時間にも関わらず
境内を訪れる多くの人とまでは言えないのですが
私が境内に滞在している間は、一人また一人と
趣のある立派な拝殿で参拝して帰っていきます。
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富成稲荷大神・本延稲荷大神・船津加稲荷大神
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末社のお稲荷様は、家内安全・商売繁盛の神様。
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毎年、お正月に献灯される稲荷提灯。
昨年は白色の提灯、今年は赤色の提灯。
登山道
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この稲荷大神の横にあった石段の先に奥の院があるかもと
登ろうとしたのですが背中にぞわっと寒気がして
登ることに躊躇していたら丁度石段上から人が降りて来たので
石段の先に何が有るのかを尋ねたら
なんとまあ登山道とのこと。登らなくて良かったあ。
この登山道について後で調べてみたら、
神戸市が主催する六甲全山縦走・半縦走大会のコースにもなっていて
須磨浦公園から宝塚までの約57㎞を走破するというもので
毎年、全国各地から2千人近くの申し込みがあるようです。
で、そのコース、その大会の様子はと言うと
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石段を登って奥の院はまだかまだかと粘り強く歩いて行ったら
こんな所に出くわしていたようです。これ遭難レベルですよね。
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目の前にこんな道が現れたら
まあさすがにおかしいと勘付くとは思いますし、
仮にこの先に奥の院があったとしても引き返すわな。
で、朝早くから1人また一人と絶えなかった参拝者は
もしかしたら板宿八幡神社の参拝を目的にと言うよりも
登山愛好者の方々だったかも知れません。
旧板宿八幡神社 石鳥居
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震災で倒壊した旧石鳥居の一部かなと。
間違っていたらゴメンやっしゃのゴメンくさい。
板宿八幡神社 境内からの景観
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予定では板宿八幡神社からそう遠くはない所に
梅の名所と言われる神社に参拝に向かうつもりでしたが
板宿八幡宮に参拝に来ていた人から
あそこの梅はもう散っているとの情報を得ることが出来たので
今回は、これで帰宅することにしました。
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元来た石段を下って板宿駅に向かいます。
神戸 鬼平コロッケ
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神戸で7店舗運営されている鬼平コロッケ。
これまで食べたことが無かったので購入してみることに。
各種コロッケ3つに、ミンチカツに、アジフライに、
じゃが串に、たまねぎ串に、ポテトサラダ。買い過ぎたあ。
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帰宅してから昼食用にと購入したのですが
我慢できずに3つのコロッケを食べ歩きでモグモグ。
一番肝心なコロッケの味はと言うと
さすがにコンビニやスーパーの惣菜のコロッケは凌駕していて
特に印象的だったのがパン粉のサクサク食感。
コロッケを求める人が行列をつくる神戸元町の森谷商店の
「どうだ美味いっしょ」的なコロッケの味とは違う
毎日食べてもくどく感じない味なので
近くにあったらちょくちょくと購入したい感じです。
神戸 板宿本通商店街
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アーケードのある商店街の通りを多くの人が
往来する雰囲気って好きなんですよね。
キョロキョロと散策しながら歩いていると
おっちょっと立ち寄ろうかと思ったお店が数店舗。
そのどのお店も入り口の扉には
支度中の札がぶら下がっていて残念無念。
今回の名所巡りで『飛松伝説』に触れたので
後は『飛梅伝説』となるのですが
飛梅が飛んでった所が福岡県大宰府の太宰府天満宮。
文明の利器を利用して空をひとっとびすれば
一夜も要さずに辿り着けるのですが、
さすがに日帰りは無理があるし勿体ないので
何泊するかの本格的な国内旅行となります。
日帰り圏内の兵庫県内、京都、奈良、滋賀等の近場に
まだまだ訪れておきたい場所が残っていて
そちらを優先したい気持ちが強いので、いつになるやらです。
催眠療法&心理療法 神戸ストレスカウンセリングルーム花時計