日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

役に立たないからこそ、役に立つ

2019-08-24 21:28:10 | アラカルト

昨日、某大学主催の「サイエンスカフェ」に出かけてきた。
今回の「サイエンスカフェ」のテーマだが、「ゲノムとエピジェネティックス」だった。
テーマとなっている「ゲノム=遺伝子情報」である、ということはご存じの方も多いと思う。
注目したいのは「エピジェネティックス(もしくはエピゲノム)」と呼ばれる、ゲノムに多様性をを与える物質だ。

お話しそのものはとても興味深く、マーケティングとは全く関係のない話であっても、これから先に起きてくるであろう「ゲノムビジネスと倫理感」という問題なども見える内容だった。
と同時に、DNAをRNAに転写をし最終的にはタンパク質となる為のステップのうち、生物として複雑になればなるほど転写をしない「ノンコーディングRNA」が多い、という話もあった。
いうなれば「何をしているのか?役に立っているのか分からないRNAが多いほど、生物としては複雑である」ということのようだ。
「役に立っているのかいないのか分からない」理由は、「ノンコーディングRNA」がすべて解明されていない為だが、この話を聞きながら思ったことは、人間そのものだけではなく社会や文化形成に似ているのでは?という気がしたのだった。

思考がシンプルな時代であれば、人は一つにまとまりやすい。
どのような時代でも登場する「独裁政治」と言われるものや「全体主義」と言われる社会だ。
このような社会は、一つの方向に引っ張られ「戦争や紛争を起こしやすい」社会とも考えられる。
ところが、「役に立つのか立たないのか分からない」という考えや人が存在する社会というのは、多様性に富み、寛容性が必要な社会でもある。
なにより「平和な社会」なはずだ。

とすれば、人そのものが「(細胞レベルで)多様性に富んでいる」存在であり、唯一無二である、ということになると思う。
それは「一卵性双生児」という、同一のDNAを持って生まれた人であっても、その後RNAに転写されていく過程で違った存在になっていく、という。
年齢を経ることによって、その違いは細胞レベルでも大きく違っていくこともわかっている、という話もあった。

細胞よりも小さなサイズであるDNAですら、それほど複雑で多様性に富んでいるとすれば、人そのものが複雑で多様ということであり、その複雑さと多様性を認め、興味や関心・好奇心を持つことが、ますます必要な社会になっていくのでは?と思いながら、講演を聞いていたのだった。