日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

よりローカルな地域資産が、地域の活性化のトレンド?

2019-08-25 20:26:30 | ビジネス

お盆休みで帰省していた実家(鳥取県・米子市)から、名古屋へ戻る時はJRを利用した。
そして在来線(=伯備線)が、時折遅れることがある為通常の乗り継ぎよりも1本遅い新幹線の座席指定を購入していたのだが、予定通り岡山駅に到着した為、前日の台風10号の影響で大混雑の岡山駅構内でも少しお土産品販売のコーナーを見て回ることができた。

そのお土産品販売のコーナーの一つが、とても小さなブースで立ち止まって商品を見る人も少なかったので、どんなお土産を販売しているのだろう?と思い、覗いてみるとなかなかの名産品が並んでいた。
JR西日本の岡山支社とのコラボでつくられた「おつまみ」の数々だったのだ。
JR西日本岡山支社 ふるさとおこしプロジェクト:岡山の美味しいおつまみ
店頭には「おつまみ」だけではなく「おやつ」もあり、どれもが美味しそうだった。

そしてパッケージを見て気づいたのだが、岡山と言っても岡山県内の様々な地域の名前+キャッチフレーズが付けられているのだ。
今回私が購入した「高梁(「たかはし」と読む) 雲海ドライピオーネ」は、JR伯備線の「備中高梁」が最寄り駅となると思うのだが、山間の小さな駅で、車窓からは典型的な日本の田舎の風景が見えるところだ。
確か「備中松山城」という山城があったように思うのだが(上下線のすれ違いの為、停車時間が長く、車窓から観光案内の看板を読んだりする楽しみがある駅でもある)、おそらくその山城の風景を含め「雲海」が見られるのだろう。
その「雲海」という言葉がキャッチフレーズとして使われると、単なる「セミドライのぶどう」がいきなり旅情感あふれるものになる。
使われているぶどうが、ぶどうの中でも高級とされるピオーネということもあり、高級感というか特別感が出てくる。

他にも「岡山の名産」ではなく、個々の産地の名前+αの商品名にすることで「特別感(最近の言葉を使うなら「プレミアム感」か?)」が出てくる。
と同時に、「産地に行ってみたい」とか「加工されていない果物や海の幸・山の幸を食べてみたい」、という気持ちがわいてくるのでは?
生産地と生活者の心理的距離をグッと縮めるだけの魅力が、この「ふるさとおこしプロジェクト」にはあるような気がするのだ。

何より、このプロジェクトをサポートしているのがJR西日本の岡山支社ということも注目すべき点だと思う。
かつて鉄道は、日本の物流の中心だった。
それが全国各地に高速道路が整備されるようになると、トラック輸送に取って代わられた。
それは物流というだけではなく、利用客という点でも同じだろう。
確かに東海道・山陽新幹線は、乗降客の多い路線だが、在来線の多くは厳しい状況に陥っている。
その在来線利用者の活性化をする一歩として、在来線沿線の名品の加工品を駅構内で販売をする、というのは挑戦的な試みかもしれないが、埋もれてしまった地方を知ってもらう良い方法だと思う。
何より、生産者の顔が見え、車窓を眺めながらポケットサイズのウィスキーを飲むという、昔ながらの旅情感も楽しめる。

駅の構内で販売をするから、大量生産する必要があるのか?と言えば、1日の販売数量は多い必要はないと思う。
むしろ、毎日数量限定で販売されることで「あの時は買えなかった」という悔しさ(と言うと大げさだが)と「今日は買えて良かった!」という、気持ちを起こさせるはずだ。
地方の小さな地域だからこそ、このような地域活性化という方法もあるのではないだろうか?