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YMOというバンドがもたらしたモノ

2023-04-04 21:13:56 | アラカルト

一昨日、音楽家の坂本龍一さんの訃報が、伝えられた。
先月末には、既にお亡くなりになっていたが、ご遺族の意向で発表そのものが遅くなったようだ。
今年1月には、高橋幸宏さんも逝去されており、音楽シーンで様々な影響を与えたYMOというバンドの再結成は、できなくなってしまった。
ただ、YMOというバンドそのものが個人での活動も多く、その活動の範囲もとても幅広かったため、YMOとしての音楽について最近語られることも少なくなっていたような気がしている。
それだけ、個性的なミュージシャンの集合体であり、横尾忠則さんのようなアートシーンで活躍される方との付き合いも、何等かの影響があったのかもしれない。

そのYMOが海外で注目を浴びるようになったきっかけは、紀伊国屋ホールで行われたライブを偶然見た米国のプロデューサー、トミー・リピューマ
の目に留まったことから、米国でのアルバムリリースが決まった、ということのようだ。
この時リリースしたアルバムは、全米チャート100位以内にチャートインをしたはずだ。
このアルバムリリースをきっかけに、米国ではなくむしろ英国のミュージシャンに影響を与える事となったように思う。
というのも、EL&Pやピンクフロイドといった電子楽器を多用したバンドが、既に人気を博していたからだ。
ただ、その後の世代のバンドが英国ではなかなか登場していなかったような印象を持っている。

そこに、日本からYMOがそれまでとは違う電子楽器を多用したバンドサウンドを出してきたことで、YMOに影響されたより若い世代のデジタルサウンドのバンドが登場するようになったような気がしている。
例えば、Japan(注意:XJapanのことではない)などが、英国の若い女性から支持されるようになると、それまでのパンク音楽のエッセンスを含んだ、デジタルサウンドのバンドが登場し、その後米国の音楽チャートを席巻するような「ブリティッシュイノベーション」と呼ばれるような、動きを創りだしたような気がしているからだ。
それが「テクノポップ」の始まりだとしたら、YMOというバンドが海外から高い評価を受けていたということも、納得できる。

マーケット的には、米国を含む海外での活躍を「成功」と言い難いところはあるかもしれない。
しかし、日本人のミュージシャンが海外のミュージシャンに、影響を与えたという例は、YMOが初めてではなかったのでは?と考えている。
海外ミュージシャンとの交流が深まる事で、YMOそのもの活動より個人の活動へとシフトしていったのかもしれない。
その中で特に坂本さんの活躍の場は、海外へと移る事になったのだろう。

活躍の場が広がり、アカデミー賞などの世界的な芸術賞などを受賞したことで、坂本さんは「これで、やっと自分のやりたい音楽をやる事ができるようになった」と、語ったといわれている。
ある意味「アカデミー賞受賞者」という肩書を得たことで、それまでの楽曲づくりの枠を超えても批判的なことを言われなくなった、という安ど感があったのかもしれない。
そして事実「枠が無くなった」ことにより、坂本さんはより自由な音楽表現だけではなく、社会的発言を積極的にするようになられたのだろう。
海外ではそれが当たり前だからだ。

もう一つ気づいたことだが、坂本さんは「戦場のメリークリスマス」をコレクティブNFTとして1音ごとの販売をした。
あたらしい経済:坂本龍一、今年演奏「戦場のメリークリスマス」テーマ曲を595音に分けてNFTに。直筆楽譜もオークションへ 

その時には、何故?という疑問を持っていたのだが、もしかしたら1音ごとに様々な人が持つことで、購入した人達が集まり「戦場のメリークリスマス」を違うカタチで演奏するようにしたかったのでは?という、気もしている。
何故なら、音楽そのものは人の心に触れ、残り、継がれていく力を持っているからだ。