日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

マイノリティを標準と考えると、市場への発想も変わってくる

2023-04-08 20:50:55 | マーケティング

週末の新聞には、新刊紹介のページがある。
写真付き書評されている作品もあれば、小さな扱いとなっている作品もある。
扱いの大小にかかわらず、このような新刊紹介のページは、どこから読んでも面白い(と感じている)。
その中で、興味を引いたタイトルの新刊があった。
ちくま新書:マイノリティ・マーケティング‐少数者が社会を変える 

このタイトルを見た時に、思い浮かんだのが「ユニバーサルデザイン」の基本のことだった。
20年以上前、「ユニバーサルデザイン」について、デザイナーの方のお話を聞く機会があった。
その時デザイナーの方は「ユニバーサルデザインというと、何か特別なデザイン力が必要だと思われるかもしれませんが、ハンディを持った方が使い易いデザインは、ハンディを持たない人にとっても使い易いデザインなのです」という話をされたのだ。

例えば、最近数多くみられるようになった「左利き用」の商品。
私が子供の頃は、左利きの子ども達は右利きに矯正された。
それが功を奏しているのか?元左利きの方の中には、左右同じようにお箸を持ったり、筆記ができているする。
今では、無理やり左利きから右利きに矯正することは、ほとんどないと聞いている。
その為新たに登場したのが「左利き市場」ということになる。
さすがに「左利き」という方は、マイノリティーと言われる少数者とは言えないが、「生活の不自由さ」が新たな市場を創り出す、という一例だと思う。

このような事例をより幅広く考えていくと、自然に「ユニバーサルデザイン」に行きつく。
障害を持った人にとって、クルマの乗り降りが楽なくデザインは高齢者や妊婦さんにとっても快適なデザインだろう。
場合によっては、大量の荷物や重たい荷物をクルマに載せる、という場合も楽かもしれない。
そう考えると、これまでの「健常者」の中でも、20代~50代くらいまでの人たちを、市場の中心と考えてきたことが、市場そのものを狭めている、ということにもなってくる。

「市場を狭める=限定的な対象者」だと考えると、「新しい市場をつくる」必要性が求められている今は、これまで市場の対象者ではなかった人たちに注目し、その人達の社会的問題を解決するという発想が、求められるようになるのは当然のことだろう。
今までと同じような人=マジョリティを対象として考えてきた市場は、市場そのものを狭め・限定的な対象者である、と考える時代になってきているのではないだろうか?