日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「神宮外苑再開発」考え

2023-04-11 22:55:33 | アラカルト

ここ数週間、連日のように報じられている「神宮外苑再開発」の問題。
今朝のFM番組でも取り上げられていた。
この「神宮外苑再開発」について、いくつか疑問な点がある。
その一つが、「環境問題・エコロジー」という言葉で当選をした小池都知事が、この「神宮外苑再開発」で周辺樹木の伐採を認めた、という点だ。
東京に限らず、都市部の中心地にある緑地帯は「都市環境」における、大きな役割を持っていると、これまで随分指摘されてきたような気がする。

この「都市部中心地の公園緑地」がある事で、周辺地域のヒートアイランド化を抑制するだけではなく、生活環境そのものを豊かにし、都市生活者(懐かしい表現だが)の癒しの場ともなっている、という指摘がされてきた。
下手な盛夏の打ち水パフォーマンスよりも、遥かに効果的で有益性が高い、ということでもある。
にもかかわらず、製菓の打ち水イベントに積極的な小池都知事が、より効果的で有益性が高いと言われている「神宮外苑」の樹木を伐採するのだろうか?

しかもここに植えられている樹木の多くは、明治天皇と昭慶皇后のご遺徳に感銘した全国の人たちから献上された樹木だという。
とすれば、明治天皇や昭慶のご遺徳はもちろんだが、当時の国民の気持ちや思いを伐採する、ということにもなる。
そのような時代的文化も含め、伐採をしてよいのか?という、環境とは違う視点での議論もされる必要があったのではないだろうか?
ただおそらくこのような「都市公園緑地の伐採」は、全国で行われているのでは?という、気もしている。
というのも、数年前京都の下鴨神社境内に高級マンション計画が持ち上がり、世界遺産の一部が破壊される、ということがあったからだ。
当時の下鴨神社側からは「世界遺産だからと言って、維持・管理するためにはその為の費用を捻出する必要がある」という理由が挙げられていたように記憶している。
産経新聞(2015年4月10日掲載):【西論】世界文化遺産に「高級マンション」⁉下鴨神社が一石を投じた・・・真に守るべきを見極めよ 

今回の「神宮外苑再開発」についても、同じような理由があったのだろうか?
そのような話が聞こえてこないような、印象を持っているのは、東京都をはじめ再開発をする側からの声が聞こえてこないからだ。

ただ、これほどまでに社会から注目された再開発となると、その後建築された建物に対しても決して良いイメージに繋がらないような気がしている。
もちろん、このような「伐採反対運動があった」ということは、再開発が着手され建物が建ち、時間の経過と共に忘れ去られていくのかもしれないが、当面はこのような経緯で造られた建物に企業や個人が入居することは、マイナスイメージになってもプラスイメージにはならないような気がする。
それほど、社会的に注目され再開発側のイメージが悪くなっている、という状況だからだ。

そもそも、人口が減り続けている日本で新たな建築物というのは、都市リスクとなるのでは?
都市部を中心に建設が進むタワーマンションにしても、そこに住む人がいなくては意味がない。
同様に、建物を建ててもその建物を利用する人がいなくては、維持・管理費ばかりがかかる「負債」となりかねない。
これからの都市再開発の在り方について、問題提起をしているのが、今回の「神宮外苑再開発」なのかもしれない。