先日、日経新聞のWebサイトに、セイコーエプソンが「古着から繊維再生の実現化」という内容の記事があった。
日経新聞:セイコーエプソン、衣類を繊維に戻す装置 再生率50%超
日経の記事にある通り、今後EUでは衣料品の廃棄処分ができなくなることが決まっている。
EU内での処分ができないとなれば、行先はアフリカやアジアで処分ということになるだろう。
その為の経費や海外での廃棄処分が判明した時の企業ダメージを考えると、このような技術は高級ファッションブランドを数多く有するEU内では、期待される技術だろうし、それらの技術を積極的に取り入れ、「再生された繊維で新たなファッションを生み出す」ということそのものが、新たな企業価値を付加することにもなるだろう。
それだけではなく、ファッション産業そのものが「環境汚染産業」というありがたくない指摘を受けている。
朝日新聞:世界2位の環境汚染産業 ファッション業界の地殻変動 繊維製品の回収も拡充へ
この朝日新聞の記事は、2022年5月30日付けなので、2年前からファッション業界では問題視されていた懸案事項であった、ということになる。
2年ほどで技術が確立したとは思わないが、廃棄処分ではなく新たな繊維としてつくられる、という技術の進歩は大きなことだと思う。
この技術の中心となったのが、日本の企業であるという点でも国内外に対する「日本の再生技術」をアピールできる出来事だろう。
とはいえ、この技術開発のパートナーとなったのは、香港繊維アパレル研究開発センターである、ということも知っておく必要があるだろう。
エプソン(リリース):ドライファイバーテクノロジーを応用した繊維再生の新技術開発へ、HKRITAと協業
グローバルな時代なのだから、海外の研究所と協業して技術開発を行うのは、やぶさかなことではない。
ただ、もし国内にある同様の研究施設との協業で、このような技術開発がされていたとすれば、そこには膨大な特許権が生まれ、もたらされるモノも大きい。
このようなことに対しての国を含めての積極的な投資が行われない、ということがとても残念な気がする、ということなのだ。
だからこそ、ファッション産業の「環境汚染産業」と言われるゆえんのもう一つの理由「染色」という環境汚染問題に、国を含めての積極的投資をして欲しいと考えている。
というのも、「環境汚染産業」と言われる理由のほとんどが、石油由来の繊維の製造、染色、という点だからだ。
ファッション産業と環境問題は、様々な面がある。
以前「動物虐待」の象徴と言われていた毛皮だが、代わりに搭乗した「フェイクファー」は「環境汚染につながる」と言われるようになった。
リアルな毛皮も化学繊維で作られたフェイクファーも時代に合わなくなってきている。
上述したように「科学染料」による「環境汚染」も、待ったなしの問題として欧州のファッション産業は対応を迫られ始めている。
そのような状況を解決する技術開発が、世界中で求められ始めているということを国も注目して欲しいと、考えている。