日経新聞のWeb版を見ていたら、面白い記事があった。
日経新聞:明朝体は怖い? デジタル時代、変わる活字の美意識
私が新社会人になった頃、和文タイプライターという器具があった。
一文字一文字反転した文字を器具で拾いながら、文字を一文字づつカーボンリボンに打ち付け、紙に印字する、という道具だ。
英文タイプライターの日本語版、と言ってしまえばそれまでだが、英文タイプライターと大きく違うのは、文字数の多さだ。
そのような器具を操る為に、専門職の女性までいた職場もあったくらいだ。
ちなみに、私も少しだけ和文タイプライターで仕事をしたことがある。
その頃の印刷物のフォントは「明朝体」が、ほとんどで「日本語を文字にしたとき、美しく見える」フォントのように感じていた。
それは、今でも変わりない。
理由は、書道教室等に通った経験のある方なら分かると思うのだが、「明朝体」は書道でいう「楷書」に近いフォントだからだ。
一般的に、「きれいな字」と言われる文字は、この「楷書」が元になっている。
「楷書」に近いフォントが「明朝体」だからこそ、見た目もきれいで読みやすいのだ。
それが、1980年代に入ると「変体少女文字」と呼ばれる、異様なほど丸い文字を書くコトが女子中高校生の間で流行した。
AERAdot.:1980年代に流行し、社会的にも大きな話題になったギャル文字「変体少女文字」
このころから、新聞や雑誌等では「明朝体」フォントが主流であったが、徐々に違うフォントも使われるようになってきた。
それが「ゴシック体」だ。
そして今や、企業の文章等でも「ゴシック体」が主流になってきているのでは?
確かに「明朝体」は、「楷書」に近いこともあり美しいフォントなのだが、整い過ぎているのかもしれない。
そもそも「楷書」そのものを見る機会が、ほとんどないのが今の若い世代なのでは?という、気がしている。
それから、PCの普及に伴い、文字そのものを書くことが減り、今ではスマホのメッセージ機能で、短文をやり取りするのが当たり前になってきている。
その為なのだろうか?最近の若い方の手書き文字が、とても読みづらいことが多くなった。
「変体少女文字」の亜流となるような文字は、まだ読めるのだが、独特の書き順で漢字の構成となる部首が崩壊している文字となると、読みたくても読めないのだ。
小学生のころから「漢字の書き取りはしてきたよね?」と、首をかしげたくなるような文字を書く、若い世代が登場し始めている、と実感することが、最近多々あるのだ。
となると、「楷書」を基にした「明朝体」を怖いと感じるのは、当然だろう。
文字の書き方は、時代とともに変化するし、言葉そのものの意味も時代とともに変わっていく。
「明朝体」フォントが怖い、と感じるのは構わないが、「紙に文字を書く」ことは、思考を整理し・深めるだけではなく、PCやスマホに入力するよりも、紙と筆記具さえあればどこでも「書くコトができる」という、大きなメリットがある。
NATIONAL GEOGRAPHIC:科学が証明「手描き」の絶大なメリット、「脳全体が活性化する」
ちなみに「楷書」で丁寧に書かれた手紙は、出した人の知性や品格の高さを感じさせるようだ。
社会人なってから、「丁寧できれいな文字を書く」という習慣づけをしてきたおかげで、好感度割増感があると私自身が感じていることなので、間違いないだろう。