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“男のためのガーデニング”改め

『大津南部の仏像-旧栗田郡の神仏』『大津絵-ヨーロッパの視点から-』~大津市歴史博物館~

2019-11-21 06:00:00 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 大津市は言うまでもなく滋賀県の県庁所在地であり、かつて天智天皇の時代には大津京が置かれた古都になります。
ユネスコ世界文化遺産「古都京都の文化財」に登録されている「比叡山延暦寺」は大津市に所在する寺院になりますし、西国三十三所の札所寺院も「石山寺」「園城寺(三井寺)」「正法寺」と歴史ある古刹が多い。

大津市歴史博物館で開催されている企画展『大津南部の仏像-旧栗田郡の神仏』の旧栗田郡は、現在の草津市・栗東市・守山市の一部が含む地域で、湖南地方独特の宗教圏の影響を受けた地とされています。
栗東市の金勝山を中心とした一帯には、古来から盛んだった山岳宗教に神道が結びつき、飛鳥文化・奈良仏教・比叡山を中心とする密教の影響が非常に強い地であったようです。



琵琶湖から流れ出す瀬田川は淀川を経て瀬戸内海にまでつながる水運ルートになっていたといい、飛鳥や平城京へ木材などを石山寺を拠点として供給していたといいます。
そのため、流通路に乗って奈良仏教が流れ込んで従来の山岳信仰と融合したような形となり、神社仏閣の建立や仏像・神像の制作が盛んに行われてきたようです。



『大津南部の仏像-旧栗田郡の神仏』では「曼荼羅や仏涅槃図などの仏画」「神像や狛犬」「白鵬時代に存在した廃寺からの出土品」、旧栗田郡の寺院に祀られていた「仏像や懸仏」など全40点にも及ぶ多様な神仏を展示。
平安期(10~11C)に造られた大津市京町の九品寺の「聖観音立像」は重要文化財に指定されている美しい仏像で、“写真撮影コーナー”として唯一撮影OKとなっていました。



聖観音立像の説明書きに“ほぼ同時期のNo14.長寿寺像と見比べて下さい。”とあり、見比べてみると“髻の高さ・顔の表情・衣文の彫口”などほぼ同じ時代の仏像とは思えないほど違いが見られます。
湖南地方にはかつて複数の仏像工房があり、それぞれの仏師工房で仏像が彫られていたとされていることの影響がありそうです。

以前訪れた寺院で“野洲川の南側の仏像には「甲賀様式」の仏像の共通点があり、野洲川の北側は「善水寺」の工房が仏像を供給していて、それぞれの工房で特徴が違うと聞いたことがあります。
この仏像は善水寺の薬師如来像と同一工房で彫られたようですが、旧栗田郡の限られた範囲の中でも作者系統の違いによって異なった仏像が彫られていたということになります。
それだけこの地で仏像制作が盛んに行われていたということになるのでしょう。





展示品には珍しい「馬頭観音懸仏」などを興味深く拝見しましたが、写真などでは何度も見つつも初めての拝観となったのが建部大社の「女神坐像(平安期・重文)」でした。
平安時代後期に彫られた女神坐像は3躰あり、長い髪をした淑やかな平安美人という印象です。



ところで、今回の大津歴博の企画展は2本立てとなっており、「大津絵-ヨーロッパの視点から-」が同時開催されています。
2019年の春にフランス「パリ日本文化会館」で大規模な大津絵展『大津絵-日本の庶民絵画』が開催され、それを記念して大津市歴史博物館でもパリ展の展示コーナーを一部再現した大津絵展が企画されたとのことです。
大津歴博では元々常設展で大津絵は展示されていますが、今回は全く別の切り口での美術展となり大津絵の良さを再認識することになりました。



驚かされれたのは大津絵に出てくるモチーフをフィギュアにしたものが数点展示されていたことでしょう。
江戸の頃に店の広告塔として看板代わりに大津絵のフィギュアを店頭に置くことがあったようですが、大津絵の鬼が彫られた像はある意味で天に踏まれる邪鬼が単独で存在しているかの様相である。

 

構成は画題ごとに数点の作品が展示されているので絵面の違いを比較するのも面白いのですが、中には浮世絵師が大津絵の題材を取り込んで作品化しているものもあります。(歌川国安、二代 歌川広重)
大津絵は浮世絵の影響を受けていると思われますが、その大津絵が今度は浮世絵師に影響を与えているのは面白いですね。

また、大津絵には動物を題材にして動物だけを普通に描いた「動物絵」があるのも知らなかった事で、興味深いのは大津絵の有名な題材を合体させたスピンオフ作品まであることでしょう。
「鬼念仏」と「藤娘」が合体した画は、大津絵の代表的なキャラクターのリメイク作品ともいえ、大津絵の自由度の高さが感じられ、構図や配色を意識した大津絵の魅力に溢れています。



エントランスには半丈六の「地蔵菩薩坐像(平安~鎌倉期・園城寺蔵)」が穏やかな姿で鎮座しておられます。
この地蔵さんは像高135cmあり、大津市に現存する坐像では最大の地蔵菩薩だといいます。



図録を買って帰りましたが、大津歴博の図録は毎回、観るポイントや時代による違い・特徴を素人にも分かりやすく解説されているのがありがたい。



小高い場所にある大津市歴史博物館から正面を見ると高校のグラウンドの向こうに琵琶湖。
対岸には神の山である三上山。湖南で見る琵琶湖は湖の幅が狭いですね。




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