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『日本の棚田百選』は実際には100ヶ所ではなく134ヶ所ありますが、「畑の棚田」は滋賀県で唯一認定されている棚田になります。
「棚田」は「傾斜が多く平地と比べて生産条件の不利な、中山間地域と呼ばれる地域において、急傾斜の斜面(斜面勾配が1/20以上)に開発された水田」と定義されていて農林水産省が認定しています。
滋賀県には棚田が多いように感じていますが、百選に認定されているのが「畑の棚田」だけというのは少し意外な感じもします。
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滋賀県では山間の辺鄙な集落の名前に「畑(注1)」が付くところがありますが、「畑」集落も標高300~400mの山腹に広がる棚田の田園地帯でした。(注1:君ヶ畑、大君ヶ畑、今畑、甲津畑など)
今は道路が整備されていて秘境感はないものの、かつては棚田が広がるかくれ里のような場所だったのだろうと想像できます。
「畑」集落には「八幡神社」が祀られており、応神天皇の皇子・隼別皇子が「拝戸水尾神社」の社殿を再建の折、父・応神天皇を奉斎し給ひし、畑の「八幡神社」となったと伝承されています。
畑の「八幡神社」には境内に巨樹スギがあると聞いて参拝しましたが、社伝や境内は広くはないもののスギの巨樹に囲まれた神社だと感じました。
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細く背の高い常夜灯の後方には2本の巨樹スギが参道の左右に立っている。
環境省の巨樹・巨木林データベースに記載されているのが「八幡神社」のスギのことだとすると、この2本はそれぞれ幹周5mと4.4mで樹高が38mと43mということになるが、果たしてこれのことか?
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環境省のデータベースの記載からすると、拝殿の横にあるスギは幹周5.3m、樹高43mということになり、樹齢は300年以上となる。
スギはやや右側に傾いていて樹皮は赤味を帯びている。この3本の巨樹以外にも境内にはスギの多い神社です。
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拝殿には自然木に能面を浮彫した額が奉納されており、額には左から般若・翁・童子かと思われる能面が彫られています。
氏子の方が彫られたのかと思いますが、なかなかに味わいのある能面奉納額です。
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本殿や境内社は、祠が覆屋の中にあり、応神天皇を祀る本殿や若宮八幡社などの4神が祀られています。
畑集落の真ん中辺りにある社殿は、集落の鎮守の神として祀られてきたのでしょう。
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4社が並ぶ社殿の一番左には「山ノ神社」の祠が祀られています。
四方を山に囲まれた畑集落にあって、山の神への信仰は古くからあったことが推測されます。
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ところで、畑集落内を移動していて驚いたのは地蔵石仏の多さでした。
棚田以外の集落内はさほど広くはないにも関わらず、あちこちに地蔵石仏が祀られており、それぞれ複数の石仏が合同で祀られています。
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なぜこれほどの数の石仏があるのかは分かりませんが、畑集落は奥まった場所で山に囲まれている立地にあり、平地の開けた黒谷集落や鹿カ瀬集落に出るのも、谷を下る必要があったこと。
また、朽木方面へは山の峠を越えていく必要があり、道中に地蔵石仏が祀られていたのではないでしょうか。
道路が整備されるに従って、あちこちに点在していた地蔵石仏がまとめられたとも考えられますが、あくまで推測です。
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かなり風化してしまった石仏が多いのですが、囲いの中に納まって祀っている石仏も多い。
写真が畑集落の石仏の全てではなく、まだ他にも石仏がありましたから、集落の規模からいって石仏の多さは尋常ではない。
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さて、「畑の棚田」には359枚の棚田があるとされていますが、全ての棚田で耕作が行われている訳ではないようで、幾つかの休耕田が見られました。
訪れた時にはまだ稲刈りは始まっておらず、黄金の稲穂が頭を垂れる美しい田圃の風景が広がっていました。
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棚田は幾何学模様のように広がっていますが、この感じだと機械は入りそうにありませんので手作業が多いのかもしれません。
こんなすり鉢状の土地に棚田を築き上げた先人の努力には恐れ入ってしまう風景です。
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集落の生活圏に近い棚田では、石組の上に田圃があり、その下に民家があるといった感じで棚田が下へ下へとつながっていきます。
もう少し稲穂が頭を垂れてきたら、道路に「もみ」が落ちてきそうなまでの豊作です。
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畑集落では山から流れ出る水は、生活用水であるとともに棚田を潤し、稲を育てる水だといいます。
集落から平地へ下る道は川に沿っていて、川には石仏にするには手頃そうな大きさの岩が多くありましたので、石仏の多さは岩の多い土地柄なのも影響しているのかもしれません。
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棚田は、そこそこの広さがある田圃もあれば、えっそこにまで植えるの?と思ってしまうような田圃もあります。
棚田を鳥瞰できる場所を探してみたのですが、実った稲の匂いを嗅ぎながら棚田をウロウロとしていました。
とても静かで、穏やかで、秋の棚田に稲穂が実る美しい場所でした。
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