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今年は親鸞上人の七百五十回御縁忌にあたって各イベントとのコラボが計画され、大通寺の本堂(阿弥陀堂)には切り絵作家「早川鉄兵」さんの切り絵による「御遠忌特別障子(全18枚)」が展示されています。
「大通寺」は1602年、本願寺第十二代教如を開基として当時の長浜城内に創建されたといいます。
1652年に現在地に移転した大通寺の本堂や大広間は、伏見城の遺構とされており、長浜への移転までは東本願寺の御影堂として使われていたものと寺伝に伝わるそうです。
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黒壁スクエアから大手門通りを歩いて角を曲がると、山門へと続く長浜御坊表参道へと出る。
古くから続く商店が並ぶ町並みは風情があり、観光客の絶えない場所になっています。
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山門は1841年に建立されたものといい、東本願寺の山門を模して造られたといいます。
上層内部が公開される時期もあり、上層の須弥壇には「釈迦如来像」「弥勒菩薩像」「阿難尊者」が祀られ、天井には美しい「天女奏楽図」が描かれています。
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門の手前には750回御縁忌ののぼりと「早川鉄兵」さんの切り絵の僧が置かれており、大通寺が特別な時を向かえていることが分かります。
長浜別院の法要は5月17日からの3日間ですが、イベントや展示等は4月の終わりから約1ヶ月の間に開催されているようです。
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大通寺のある旧長浜町界隈は彦根藩に属していたこともあって彦根井伊藩とのつながりが深く、井伊家の援助や井伊家からの養女が住職と婚姻するなどの関係があったそうです。
井伊家との関係、町人町としての繁栄と真宗信仰、東本願寺山門を模していることがあって、山門の彫り物や彫金も豪華な出来栄えとなっています。
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現在の大通寺には通用可能な門が4ヶ所ありますが、山門の西にある「台所門(薬医門)」は廃城になる前の長浜城の大手門だったといわれます。
一説によると、本能寺の変の時に呼応した京極氏による矢や銃弾の痕跡があるといわれることがあるようです。
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「本堂(阿弥陀堂)」は重要文化財となっており、渡り廊下を通って「大広間(附玄関・重文)」へと行くことができます。
伏見城の殿舎・東本願寺の御影堂だった履歴もあって、大きな御堂となっています。
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本堂の内外を仕切る襖には「早川鉄兵」さんの切り絵があしらわれていますので、最初に見ると驚きの光景になります。
早川鉄兵さんは石川県に生まれ育ち、大阪でカメラマンとして活躍していた後、米原市の山深い集落の民家へ移住し、切り絵作家として暮らされているといいます。
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切り絵は本堂の外から見てもインパクトの強い作品ですが、堂内から見ると太陽光が透過して浮き立つように見える。
大通寺は歴史ある大寺ですので須弥壇も立派な造りになっていますが、入ってすぐにお参りさせていただいた後は須弥壇とは反対側の障子にある切り絵の障子を眺めておりました。
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早川さんは“自然と共に暮らして見えるもの”として、日常生活の中で野生動物に遭遇する里山暮らしの中で切り絵作品を造られているそうです。
自然の中で出会った動物やかつて見た動物や鳥、仏教的な生き物と阿弥陀如来が共存している仏教的な世界観の見事なコラボレーション作品だと思います。
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広い外陣に広がるこの世界観は凄いと感動しながら、大手門通りを歩きながらの帰り道、1910年創業(現在はNPOの寺務所)の土田金物店の看板の下に大きな鯉のぼりが吊るされていました。
全長は約6mあり、和紙で造られている明治時代の鯉のぼりで、毎年5月5日の子供の日の頃に吊るされるそうですが、なかなか風情のある鯉のぼりですね。
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