僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

「今森光彦展 いのちめぐる水のふるさと-写真と切り絵の里山物語-」と仰木の棚田

2021-07-07 19:30:00 | アート・ライブ・読書
 今森光彦さんの写真・切り絵展には過去にも足を運んだことがありましたが、今回の「いのちめぐる水のふるさと-写真と切り絵の里山物語-」展は、今森さんのライフスタイルが垣間見えるような美術展でした。
アトリエ前に作られた「オーレリアン(チョウを愛する人)の庭」や竹林を開墾して里山を再生した棚田の「光の田園」。
失われた里山を再生した「環境農家」での暮らしを美しい写真や色彩豊かな切り絵で表現したオール今森を実感できるような構成です。



構成は「第1章 里山物語」「第2章 アトリエ」「第3章 里山のアトリエ」「「第4章 いのちをめぐる琵琶湖水系」に分かれる。
何ヶ所かで紹介ビデオが流れ、今森さんの庭仕事道具や収穫した食物の味覚の楽しみ方などが展示されていて、そのライフスタイルは羨ましい限り。



チラシやネットで事前に紹介されていた切り絵でもの凄く気になっていたのは、奄美時代の田中一村の絵画との印象が共通していること。
表現手法は全く違うとはいえ、自然を観察して色彩豊かにその魅力を表現している作品に心を引き付けられます。

田中一村「初夏の海に赤翡翠」(アカショウビン)と今森光彦「ヤツガシラとジキタリス」の美しさを比べてみると、両方それぞれの凄さと魅力が分かります。
下はコロナの緊急事態宣言があって行くことが出来なかった「田中一村展-奄美へと続く道-」のチラシです。楽しみにしていたのに残念でした。



今森さんの切り絵は過去に何度か見ているはずでしたが、今回は大作が多いことがあって見応えは充分。
左は「キョウチクトウスズメとドリアン」、左は「ヨウムとチューリップツリー」。

キョウチクトウスズメは日本では九州・奄美大島・徳之島・沖縄本島・宮古島に分布し、ドリアンは東南アジアのマレー半島を現産地とする。
チューリップツリーはアメリカ東部が原産のチューリップに似た花を咲かせる樹木で、アフリカ西海岸の森林地帯に分布する大型インコだといい、今森さんも自然界では見た事はないそうです。



左の「クジャクチョウとオリーブ」のクジャクチョウは滋賀以北に分布するとされますが、未だに出会ったことのない蝶で、オリーブは小豆島が日本最初の栽培地で国内最大の生産量を誇る。
「キサントパンスズメガと彗星蘭」のキサントパンスズメガは「ダーウィンの蛾」と呼ばれ、長い口吻を持つ蛾と距の内外蘭との間で共生してくため進化していったといわれています。



今森さんは、アトリエ「オーレリアンの庭」で理想の里山を造ってきた方ですが、2018年頃からは45年間放置されていたという棚田を買い取り、農家になられたのだという。
竹林と化してしまった棚田を開墾して、「環境農家」と呼ぶ、“豊かな土の匂いを取り戻すプロジェクト”を実現されているといい、日本の里山を蘇らせようとされています。

となると、やはり気になるのはいったい仰木ってどんなところなのだろう?ということです。
今森光彦展が開催されている佐川美術館から仰木集落は琵琶湖大橋を渡ってすぐ近くというこもあって、仰木の棚田へと向かいます。



仰木の棚田に入ると道の両サイドに獣除けの鉄柵が張られ、1台通るのがやっとの道が入り組んだ迷路のようになっている。
何ヶ所も鉄柵の扉があり、入ることは可能なようだが、農業の軽トラしか通らない道は荒れている。狭いスペースで何度も車を切り返して戻る羽目になる。



区画された棚田が広がる場所もありますが、自然の傾斜を利用している棚田が多い場所もあります。
棚田は高い場所から鳥瞰した写真を眺めると美しいのですが、棚田に沿って進んでいると全体像が分からないのが難点です。



仰木の集落は、昔からの集落と思われる区域と新興のニュータウンがありましたが、古くからの集落には祠に祀られたお地蔵さんや、祠の周辺に祀られた石仏を何度か見ました。
棚田の畔にも石仏が祀られ、色鮮やかなグラジオラスが添えられていました。誰かお世話をされている方がおられるのでしょうね。



また、棚田は山を背にして造られているため、山麓ではカカシの姿を見かけます。
鹿とか猪や猿を威圧していますが、獣より当方のようなよそ者の人間の方が見て驚いてしまいます。



迷路のような道を進んで行くと、突然ダチョウの姿が!
いや、ダチョウにしては小さいし、姿も違う。これはエミューのようです。

何でこんなところで飼われているのか。しかも柵の外側にエサ(キャベツ)があり、エサをやれるようにもなっています。
エミューは大きいのが3羽、小さいのが3~4羽。オーストラリアの生き物が仰木の棚田で暮らしているなんて驚きますよね。



驚いている当方とは反対にエミューは奥の小屋から出てきて近づいてきます。
エミューは警戒心が薄く、人懐っこいやつなのですが、オーストラリアではかつては農地を荒らす害鳥として大量虐殺された時代があったようです。(エミュー戦争)



「今森光彦展 いのちめぐる水のふるさと-写真と切り絵の里山物語-」では「オーレリアンの庭」の春夏秋冬を写真に収められていましたが、「仰木の棚田」の四季もさぞや美しいことでしょう。
水を張った田植え前の田圃や黄金の稲穂が垂れる秋の田圃。ゆっくり回れば面白い生き物たちとの出会いが期待できそうですね。



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