hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

角田光代「森に眠る魚」を読む

2009年02月11日 | 読書2

角田光代著「森に眠る魚」2008年12月、双葉社発行を読んだ。
「小説推理」2007年11月号から2008年12月号に連載された作品に訂正加筆したものだ。

この小説は1999年に東京都文京区で起き、「お受験殺人」としてテレビや週刊誌で騒がれた主婦による幼児殺害事件をモチーフにしている。育児を通してしだいに仲良し仲間になる5人の母親。

平凡を軽蔑する妹に対抗する千花。
高校でかつて疎外されたことのある瞳。
寮で地味な学生時代をすごしてきた容子。
レベルの高いシティライフを無理に求めた若い繭子。
なにごとも完璧を求めるかおり。

しかし、お受験が近づくと、その関係が変わっていく。最初は好ましく思っていた育児への考え方、生活レベルの差などが気になり、あの人には知られたくない、なぜわたしだけのけものに、なんでもすぐ真似るあの人は避けたいと、ばらばらになる。嫉妬、依存心、不信感が大きくなり、憎悪へと変わる。そして、やがて、それぞれの生活が崩れていく。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

女性ならではの、狭い世界での虚栄心、嫉妬に基づく心理戦は、男性たる私には面倒であり、読み飛ばしてしまった。しかしおそらく、女性ならば誰しも心当たりがあり、共感することも多いのだろう。
表面上のおつきあいから、共感することがあると、一気にべたりと距離を詰め、同一化を夢想する。その結果、わずかなすれ違いが相手への憎悪に変わる。
おそろしや、おそろしや。

角田光代さんの筆力は抜群だけに、絶対ありそうに、恐ろしい迫力で迫ってくる。



角田光代さんは、1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、1996年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、1997年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、1999年「キッドナップ・ツアー」で産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年「キッドナップ・ツアー」で路傍の石文学賞、2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞、2005年「対岸の彼女」で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞を受賞。
なお、角田光代さんは、2006年芥川賞を受賞した伊藤たかみさんと6年間の同棲を経て2005年春に婚姻届を出した。


コメント
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