グレッグ・イーガン著、山岸真訳「TAPタップ」2008年12月、河出書房新社発行を読んだ。
「『すこし不思議な』海外文学の名作を、ジャンルを超えて集成」という奇想コレクションの中に一冊で、10篇の短編集だ。
グレッグ・イーガンは、SFの人気作家で、なかでも自然科学的を主なテーマにしたハードSFの大御所だそうだが、この本には、ホラー小説が多く収録されている。
人類の未来を切り開く遺伝子操作、臓器移植、脳研究といった先端のテクノロジーが人間に適応され、いつの間にかその目的がずれ、奇妙で、醜悪な状況に変わっていく。著者の最先端技術に関する豊富な知識で、架空のテクノロジーをいかにもありそうに説得力ある形で提示して、我々を混乱に導く。一体、人間ってなんなんだと。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
SF、ホラー好きには、とくに両者とも好きな人には必見の書だろう。
私は、SFはほとんど読んだことがないし、無理な設定、強引な論理でわざとらしさが目立つ作品が多く、どうも好きになれない、というかなじめない。さらに、単純な理系人間の私は、ホラーを頭からばかにしていて、ジョークにもならないのでほとんど読まない。
この作品は、作者の最新の自然科学、技術に関する知識が深く、SFの短編は面白く読んだ。人間の機能の一部が機械に置き換わり、どんどん進むと、物か人間かはっきりしなくなる恐ろしさが現実のものと思える。
しかし、この本の大部分を占めるSFまじりのホラーの短編は話があまりにも現実から飛びすぎるのでついていけない。
「新・口笛テスト」は、聞いた者を熱中させ上の空にする悪魔的な音楽が巻き起こす物語。潜在意識に訴えるサブリミナル効果を知っている我々は、一概に否定できないのだが。
「視覚」は、目だけが体外離脱するという話だが、少々くどい。
「ユージーン」は、遺伝子操作であらゆる点で天才を作るバイオSFだが、どこまで?という問題提起だ。ホラー的要素がなく、興味を維持して読めた。
「悪魔の移住」は、ホラーで集中して読めなかった(恐いからではなく)。
「銀炎」は、エイズより恐ろしい病気とカルト集団のホラー。「散骨」、「自警団」、「要塞」「森の奥」はホラー的で略。
最後の「TAP」は面白い。脳に埋め込むことであらゆるものを言語で表現することを可能にするインプラント“TAP”。使用者の女流詩人が謎の死を遂げた。詩人の娘から事件の究明を衣頼された女私立探偵が捜査するSF殺人ミステリ。
グレッグ・イーガン Greg Egan は、1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。コンピュータ・ブログラマとして勤務後、専業作家になる。1983年、デビュー。「現役最高のSF作家」と評されている。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。日本のSFファンの間では有名で人気が高いハードSFの大家とされている。著書に、「宇宙消失」「ディアスポラ」他。
私の大好きなオーストラリア・パースの出身なのだが、プロフィールを公開しないので詳細はわからないらしい。彼自身のホームページにも自身のことは “ I am a science fiction author and computer programmer. ” としか書いていない。このHPには、へんなCGがいろいろあって、彼自身が創っている。そのなところから、プログラマーでもあると書いているのだろう。
訳者の山岸真は、1962年、新潟県生まれ。埼玉大学教養学部卒業。英米文学翻訳家。訳書に、イーガン「宇宙消失」「しあわせの理由」、コーニイ「ハローサマー、グッドバイ」他。
「『すこし不思議な』海外文学の名作を、ジャンルを超えて集成」という奇想コレクションの中に一冊で、10篇の短編集だ。
グレッグ・イーガンは、SFの人気作家で、なかでも自然科学的を主なテーマにしたハードSFの大御所だそうだが、この本には、ホラー小説が多く収録されている。
人類の未来を切り開く遺伝子操作、臓器移植、脳研究といった先端のテクノロジーが人間に適応され、いつの間にかその目的がずれ、奇妙で、醜悪な状況に変わっていく。著者の最先端技術に関する豊富な知識で、架空のテクノロジーをいかにもありそうに説得力ある形で提示して、我々を混乱に導く。一体、人間ってなんなんだと。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
SF、ホラー好きには、とくに両者とも好きな人には必見の書だろう。
私は、SFはほとんど読んだことがないし、無理な設定、強引な論理でわざとらしさが目立つ作品が多く、どうも好きになれない、というかなじめない。さらに、単純な理系人間の私は、ホラーを頭からばかにしていて、ジョークにもならないのでほとんど読まない。
この作品は、作者の最新の自然科学、技術に関する知識が深く、SFの短編は面白く読んだ。人間の機能の一部が機械に置き換わり、どんどん進むと、物か人間かはっきりしなくなる恐ろしさが現実のものと思える。
しかし、この本の大部分を占めるSFまじりのホラーの短編は話があまりにも現実から飛びすぎるのでついていけない。
「新・口笛テスト」は、聞いた者を熱中させ上の空にする悪魔的な音楽が巻き起こす物語。潜在意識に訴えるサブリミナル効果を知っている我々は、一概に否定できないのだが。
「視覚」は、目だけが体外離脱するという話だが、少々くどい。
「ユージーン」は、遺伝子操作であらゆる点で天才を作るバイオSFだが、どこまで?という問題提起だ。ホラー的要素がなく、興味を維持して読めた。
「悪魔の移住」は、ホラーで集中して読めなかった(恐いからではなく)。
「銀炎」は、エイズより恐ろしい病気とカルト集団のホラー。「散骨」、「自警団」、「要塞」「森の奥」はホラー的で略。
最後の「TAP」は面白い。脳に埋め込むことであらゆるものを言語で表現することを可能にするインプラント“TAP”。使用者の女流詩人が謎の死を遂げた。詩人の娘から事件の究明を衣頼された女私立探偵が捜査するSF殺人ミステリ。
グレッグ・イーガン Greg Egan は、1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。コンピュータ・ブログラマとして勤務後、専業作家になる。1983年、デビュー。「現役最高のSF作家」と評されている。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。日本のSFファンの間では有名で人気が高いハードSFの大家とされている。著書に、「宇宙消失」「ディアスポラ」他。
私の大好きなオーストラリア・パースの出身なのだが、プロフィールを公開しないので詳細はわからないらしい。彼自身のホームページにも自身のことは “ I am a science fiction author and computer programmer. ” としか書いていない。このHPには、へんなCGがいろいろあって、彼自身が創っている。そのなところから、プログラマーでもあると書いているのだろう。
訳者の山岸真は、1962年、新潟県生まれ。埼玉大学教養学部卒業。英米文学翻訳家。訳書に、イーガン「宇宙消失」「しあわせの理由」、コーニイ「ハローサマー、グッドバイ」他。