ナンシー・ヒューストンNancy Huston 著、横川晶子訳「時のかさなり」2008年9月新潮社発行を読んだ。
裏表紙にはこうある。
表紙の裏はこうだ。
訳者あとがきによれば、この作家ナンシー・ヒューストンは、語りや構成に工夫をこらしたものが多いとのことだ。
この小説の構成はかなり変わっている。4章からなるが、章ごとに時代をさかのぼり古い話になっていく。しかも、語り手は常に6歳の子供だ。そして、その親が次章では子供になり、4代をさかのぼっていく。
語り手が子供なので、情報は限られ、なぞを残したまま次章に進んでいく。場所もアメリカ、イスラエル、カナダ、ドイツと移り、作中人物が語る言語も英語、ドイツ語、ヘブライ語、ポーランド語となり、そこにイラク戦争、パレスチナ問題、ナチスドイツといった政治問題がからまる。
フランス・フェミナ賞、Prix France Television賞受賞。原題 : Lignes de faille
ナンシー・ヒューストンは、1953年カナダ・カルガリー生まれ。英語を母語とし、カナダ、ドイツ、アメリカで育つ。1973年パリへ渡り、ロラン・バルトに師事。1977年「言語的禁忌」の研究で社会科学高等研究所の学位を受ける。1970年代のフェミニズム運動に参加。1981年処女小説「Les Variations Goldberg(ゴルトベルク変奏曲)」を発表。1993年「Cantique des Plaines(草原讃歌)」でカナダ総督大賞受賞。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
ませているが、なんといっても6歳の子供という視点で語られるので、複雑な事情がよりミステリアスになる。
また、時代の流れをさかのぼっていく構成は私にとっては新鮮だった。子供の疑問が次の章での親、といってもそのときは子供だが、によって不十分ながら説明される。複雑な構成の小説を、著者は、書くときは、時代順に書いて、後からひっくり返してから見直したのだろうか。
ユダヤ系の家庭は母親中心で母子の関係が濃密と聞いたことがあるが、まさにこの小説の家庭がそうだ。6歳の子供ながら、「しっかりしろ」背中をドンと叩いてやりたくなる。それにしても、最初に出てくる6歳児ソルが、ずるがしこく、いやらしくませたガキで、超過保護の母親と共に、どなりつけたく、いらいらしながら読まされてしまった。
裏表紙にはこうある。
わたしにこの声をくれたのは誰だろう--?
ナチス統制下のドイツから、カナダ、イスラエル、そしてブッシュ政権のアメリカへ。四代をさかのぼり六歳のこどもたちが語る、ある一族の六十年。
ナチス統制下のドイツから、カナダ、イスラエル、そしてブッシュ政権のアメリカへ。四代をさかのぼり六歳のこどもたちが語る、ある一族の六十年。
表紙の裏はこうだ。
2004年のカリフォルニア、豊かな家庭で甘やかされながら育つソル。
1982年、レバノン戦争ただ中のハイファに移り住み、アラブ人の美少女との初恋に苦悩するランダル。
1962年のトロントで祖父母に育てられ、自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れる多感なセイディ。
1944-45年ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、実の兄亡きあと一家に引き取られた“新しい兄”と運命の出会いを果たすクリスティーナ―。
世代ごとに、六歳の少年少女の曇りない眼を通して語られる、ある一族の六十年。血の絆をたどり、絡まりあう過去をときほぐしたとき明かされた真実は…魂を揺さぶってやまない傑作長篇。
1982年、レバノン戦争ただ中のハイファに移り住み、アラブ人の美少女との初恋に苦悩するランダル。
1962年のトロントで祖父母に育てられ、自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れる多感なセイディ。
1944-45年ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、実の兄亡きあと一家に引き取られた“新しい兄”と運命の出会いを果たすクリスティーナ―。
世代ごとに、六歳の少年少女の曇りない眼を通して語られる、ある一族の六十年。血の絆をたどり、絡まりあう過去をときほぐしたとき明かされた真実は…魂を揺さぶってやまない傑作長篇。
訳者あとがきによれば、この作家ナンシー・ヒューストンは、語りや構成に工夫をこらしたものが多いとのことだ。
この小説の構成はかなり変わっている。4章からなるが、章ごとに時代をさかのぼり古い話になっていく。しかも、語り手は常に6歳の子供だ。そして、その親が次章では子供になり、4代をさかのぼっていく。
語り手が子供なので、情報は限られ、なぞを残したまま次章に進んでいく。場所もアメリカ、イスラエル、カナダ、ドイツと移り、作中人物が語る言語も英語、ドイツ語、ヘブライ語、ポーランド語となり、そこにイラク戦争、パレスチナ問題、ナチスドイツといった政治問題がからまる。
フランス・フェミナ賞、Prix France Television賞受賞。原題 : Lignes de faille
ナンシー・ヒューストンは、1953年カナダ・カルガリー生まれ。英語を母語とし、カナダ、ドイツ、アメリカで育つ。1973年パリへ渡り、ロラン・バルトに師事。1977年「言語的禁忌」の研究で社会科学高等研究所の学位を受ける。1970年代のフェミニズム運動に参加。1981年処女小説「Les Variations Goldberg(ゴルトベルク変奏曲)」を発表。1993年「Cantique des Plaines(草原讃歌)」でカナダ総督大賞受賞。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
ませているが、なんといっても6歳の子供という視点で語られるので、複雑な事情がよりミステリアスになる。
また、時代の流れをさかのぼっていく構成は私にとっては新鮮だった。子供の疑問が次の章での親、といってもそのときは子供だが、によって不十分ながら説明される。複雑な構成の小説を、著者は、書くときは、時代順に書いて、後からひっくり返してから見直したのだろうか。
ユダヤ系の家庭は母親中心で母子の関係が濃密と聞いたことがあるが、まさにこの小説の家庭がそうだ。6歳の子供ながら、「しっかりしろ」背中をドンと叩いてやりたくなる。それにしても、最初に出てくる6歳児ソルが、ずるがしこく、いやらしくませたガキで、超過保護の母親と共に、どなりつけたく、いらいらしながら読まされてしまった。