hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

白石一文『幻影の星』を読む

2012年05月11日 | 読書2

白石一文著『幻影の星』2012年1月文藝春秋発行、を読んだ。

博多の専門学校を中退後、居酒屋チェーンのバイト店員から今は東京で酒造メーカーの正社員となった熊沢武夫は25歳。「人もモノも自然も全部イリュージョンなんじゃないかな」とつぶやく年上でバツイチの堀江さんと不思議な恋愛をしている。ある日、郷里の母からの電話で自分のレインコートが地元のバス停に置き忘れられていたことを知らされる。しかし同じレインコートは現に自宅にもある。

諫早に戻って会社員をしながら、父の借金を肩代わりした社長と不倫を続け、夜はスナックで働く25歳の久美の話がからむ。彼女の携帯が10数年前にしか行ったことがない場所で発見されたのだ。

ふらつく時間と空間の混乱の中から、すべてはイリュージョンではないのかとの問いかけが続く。

初出「オール読物」2011年8月号~11月号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

東日本大震災の映像を見て、非現実感に捕らわれた人が多いと思う。著者もその一人だったのだろう。しかし、物語というより、理屈っぽさが先に立ち、この世はイリュージョンとの話に素直に入り込みにくい。

他人の著書等を長く紹介するなどストーリー的には枝葉への入り込みが長い。(『ゾウの時間ネズミの時間』の著者本川達雄の『世界平和はナマコとともに』を5ページ、梅枝母智夫(架空作家)のエッセイ「どうせ絶滅の星」が6ページ、東京カテドラル聖マリア大聖堂など)。



白石一文(しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。
文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。
2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞
2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。
他に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『私という運命について』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『砂の上のあなた』『翼』など。


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