hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

三浦しをん『秘密の花園』を読む

2012年05月13日 | 読書2


三浦しをん著『秘密の花園』新潮文庫み34-4、2007年3月新潮社発行、を読んだ。

カトリック系名門女子高に通う17歳の3人の少女たちの青春小説。

幼い頃に受けた性的いたずらによるトラウマを抱え男子とうまく付き合えず、その上、母を亡くしてしばらく学校を休む那由多(なゆた)。周囲には無関心で冷静だが那由多には親しみを見せる翠(すい)。幼稚園から上がってきたお嬢様グループなのに那由多と翠の間に入り自分の居場所を見つけたいが疎外されがちな淑子(としこ)。

女子高という狭い世界に閉じ込められ、一方では居心地の良さに浸り、周囲と普通(?)な距離感を保てず、痴漢に強烈に反撃したり、生まれなかった兄を名前で呼んだり、教師と恋愛したあげく失踪したりと、急に飛んだ行動に走る心理不安定な3人。

「中谷さんって冷たいのね」と言われて、彼女は思う。

彼女たちが基準にしているのは実は冷たさや温かさではなく、人当りがいいか悪いかという点だ。だがいくら自分にそう言い聞かせても、指先は動揺の温度を漂わせたままだ。



初出:2002年3月マガジンハウスから刊行



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

名門女子高の雰囲気、心理戦に興味のある人にはお勧めだ。作者三浦しをんが通った横浜雙葉が舞台なのだろう。えげつない話は出てこないが、キリスト教の説教、下からあがってきたお嬢様達との隔絶などしっかり書けている。

第一章の那由多と第三章の翠のキャラクターは興味がわくが、第二章の淑子はただ一途で面白みに欠ける。

『まほろ駅前多田便利軒』などで見せるユーモア、余裕ある記述ぶりはここにはなく、いかにも若書きといったふうに真面目さがそのまま出ている。ここを経て今の三浦さんがあるとの感を持った。

普通の小説では、最初に登場するときに、多少文章的に無理があっても、姓と名がふりがなつきで示される。ところが、この小説では名前だけで進んで、あとから姓が示されたり、翠の場合は、真ん中あたりではじめて「すい」とふりがなが示される。その時、みどりと誤って呼ばれるという設定はあるのだが、わかりにくい。

三浦しをんの略歴と既読本リスト





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