海堂尊著『氷獄』(2019年7月31日KADOKAWA発行)を読んだ。
KADOKAWAの内容紹介は以下。
バチスタ裁判、開廷。検察組織にメスを入れる、医療×司法エンタメ!
手術室で行われた前代未聞の連続殺人「バチスタ・スキャンダル」。
被疑者の担当となった新人弁護士・日高正義は、有罪率99.9%を誇る検察司法の歪みに、正義のメスを入れる!
医療と司法の正義を問う、リーガル×メディカル・エンタテインメント!
「私が絞首台に吊されるその時、日本の正義は亡びるのです」
新人弁護士・日高正義が初めて担当する事件は、2年前、手術室での連続殺人として世を震撼させた「バチスタ・スキャンダル」だった。被疑者の黙秘に苦戦し、死刑に追い込めない検察。弁護をも拒み続ける被疑者に日高正義は、ある提案を持ち掛けた。こうして2人は、被疑者の死刑と引き換えに、それぞれの戦いを開始する――。(「氷獄」)
『チーム・バチスタの栄光』のその後を描いた表題作を含む、全4篇。
待望のシリーズ最新作。田口・白鳥も登場!
◆収録作
「双生」……医師・田口公平のもとで研修に励むすみれ・小百合の桜宮姉妹。外来患者の夫の異変に気付いたすみれは、ある斬新な治療法を提案する。
「星宿」……十字星を見たい――。看護師の如月翔子は、手術を拒否し続ける少年・村本亮の願いを叶えるため、便利屋・城崎を呼び出し――。
「黎明」……末期癌の妻が入所した東城大学医学部付属病院のホスピスは、治る希望を捨て、死を受け入れるという方針だった。夫・章雄は反発するが……。
「氷獄」……新人弁護士・日高正義は「バチスタ・スキャンダル」の被疑者のもとを訪れる。弁護の拒否を続ける被疑者に、日高正義はある提案を持ち掛けて……。
長々と概要説明を引用したので、以下、本書の半分以上を占める表題作「氷獄」だけに少し触れるにとどめる。
2008年、37歳の新人弁護士・日高正義は名前「正義」にふさわしい冤罪事件を扱う鹿野弁護士事務所に所属させてもらった。国選弁護士としてはじめて担当になったのは「バチスタ事件」の犯人、氷室貢一郎だった。
彼は桜宮市の東城大学医学部付属病院のバチスタ手術専門の外科チームの一員であったが、手術中の患者を殺害した疑いで逮捕された。しかし氷室は容疑は認めているが、完全黙秘していて、被害者は3名との噂があるのに、起訴は1件だけになりそうだ。彼はなぜ殺人を起こしたのか。
初出:「小説 野性時代」2015年3月号~2019年5月号(改題、改稿を含む)
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
4編の連作短編のすべて、とくに最後の「氷獄」は、「バチスタ事件」の一連の前作で登場する人物が多く出てくるが、十分な説明がないし、前作でのキャラがわからないと十分楽しめない。少しだけだいぶ前に読んだことのある私は、著者だけ楽しんでいる様子にわかるようで、わかっていないようで、隔靴掻痒(かっかそうよう)。
いずれにしても、登場する人物のキャラが濃すぎて、漫画チックで、私の好みではない。
主な登場人物
田口公平:不定愁訴外来主任(「愚痴」外来)。ホスピス棟の担当医でもある。
高階権太:東城大学医学部付属病院病院長。
白鳥圭輔:厚生労働省の技官、「火喰い鳥」、ロジカルモンスター。田口の師匠と自称。
山室教授:東城大学医学部教授
桜宮姉妹:桜宮病院の医師で東城病院で研修中。ロングヘアの口の悪いすみれが姉で、ショートの物静かな小百合が妹。
日高正義:鹿野弁護士事務所の新人弁護士。バチスタ事件の犯人・氷室医師の弁護士。
久馬久:人権派弁護士。「冤罪被害者を救う会」団長。妻はへそ曲がりで巨体の弁護士の篤子。
別宮葉子:桜宮市を本拠地とする地方紙「時風新報」の記者
韜晦(とうかい):自分の才能・地位・身分・行為などを包み隠すこと。「韜」は包み隠す、「晦」はくらます。
知悉(ちしつ):知り尽くすこと。 悉(ことごと)は、残らず、すっかり、全部。