hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

キンモクセイの香りに誘われて

2020年10月08日 | 散歩

巣ごもりの日々に飽きて、たまにはいいかと、人通りの少ないいつもの散歩道の一つをぶらりと歩き出しました。どこからか甘い香りがただよってきます。これは確かキンモクセイ(金木犀)の香りに違いないとあたりを見渡しました。小さなオレンジ色の花が一面に地面に散っているところがあります。茂った葉の間にオレンジの花の房を持つキンモクセイが、「ここだよ、ここだよ」と、教えてくれます。

 

いつも通っている道のそんなところにキンモクセイがあるなんて気づきもしませんでした。キンモクセイはこの季節だけ一斉に豊香を広くただよわせ、華やかにオレンジの敷毛布を広げて、そして散っていくのです。あとはひっそりと目立たないただの庭木になって、また来年のこの季節まで、じっと風景に埋もれているのです。

 

真っ直ぐ伸びる住宅街のいつもの道をのんびり歩いていくと、整地された空地がありました。手前のクリーム色に塗られたコンクリートの塀と、角の小さな家との間のそれほど広くはない土地ですが、前に何があったのか、まったく思い出せません。何もなくなった平地の方が目立つのも哀しいものがあります。無くなって初めてその存在を主張しているようです。

 

いつも曲がる角を、今日は気まぐれでそのまままっすぐ歩いてみました。右手のシャレた洋館の玄関先の駐車場が、何か変なのです。しばらく立ち止まっていてわかりました。駐車場の右手にあった桜の老木が根元から切られていたのです。春先にあんなに見事に豊満な花を咲かせていたのにと、残念でなりません。たしかにそれほど広くはない駐車場に、太い幹、横に伸びた枝はじゃまに違い有りません。たまに通る者が何を言えるものでもありません。せめてあの桜の老木を思い出し、密かに目に焼きつけておくことにしましょう。

 

帰り道、ふと考えてしまいました。私は、それなりに楽しく、家族仲良い人生で満足しているのですが、80歳を目前にして、私に、他人を楽しませた、あるいは感動を与えた季節がわずかでもあったのだろかと。

 

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