織守(おりがみ)きょうや著『花束は毒』(2021年7月30日)を読んだ。
罠、また罠。100%騙される、戦慄ミステリー!
「結婚をやめろ」との手紙に怯える元医学生の真壁。
彼には、脅迫者を追及できない理由があった。
そんな真壁を助けたい木瀬は、探偵に調査を依頼する。
探偵・北見理花と木瀬の出会いは中学時代。
彼女は探偵見習いを自称して生徒たちの依頼を請け負う少女だった。
――あの時、彼女がもたらした「解決」は今も僕の心に棘を残している。
大人になった今度こそ、僕は違う結果を出せるだろうか……。
背筋が寒くなる真相に、ラストに残る深い問いかけに、読者からの悲鳴と称賛続出の傑作ミステリー。
木瀬芳樹:法学部の大学生。正義感が強い。中学生のとき、医学部生だった真壁が家庭教師だった。
真壁研一:医者の息子、成績優秀、男前の人気者だったが、事件の被疑者となり医学部を辞めた。当時の恋人は高村真秀(まほ)。今はインテリアショップの店長。かなみとの結婚を控えた彼に脅迫状が届き、……。
北見理花:叔父の探偵事務所に勤める調査員。木瀬の中学の1年先輩で、当時から素人探偵だった。
本書は書下ろし。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)
冤罪を主張する彼は、なぜ示談したのか? 犯罪者でなければ人犯人は? 脅迫者は誰で、何が目的なのか? 調書にアクセスできない探偵は、被害者は誰かもわからない。
真壁を信じる木瀬と、探偵の北見は、あの手この手で徐々に真相に迫っていく。
そして、衝撃のラスト! 木瀬の選択は?
織守きょうや(おりがみ・きょうや)
1980年ロンドン生まれ。国際基督教大学卒、早稲田大学法科大学院修了。
2012年『霊感検定』で第14回講談社BOX新人賞を受賞しデビュー。
弁護士として働きながら小説を執筆。
2015年『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。シリーズは累計60万部突破。
他、『少女は鳥籠で眠らない』、『301号の聖者』、『ただし、無音に限り』、『響野怪談』、『朝焼けにファンファーレ』、『幻視者の曇り空』など。
蛇足
本書の最大の読みどころは、衝撃のラストだ。
単純ともいえる正義感を持つ木瀬は中学時代に北見による解決策に「正しい解決なのか?」と疑問を持ったまま大人になった。この事件では、今度こそ正しい解決に進みたいともがいていたのだが、結局、彼が選択した結論はいかに?
著者はインタビューで、木瀬の最後の選択について以下のように答えている。
「この選択については“自分の中ではこっち”という答えが決まっていたのですが、いざ書き上げたらどちらを選ぶべきか揺らいでしまって。刊行後もまだ結論が出ないなんて初めてです。でも、この選択がインパクトを残すという感想を沢山いただくので、今作については自分でも迷うくらいのラストで良かったのかなと思います」