和田秀樹著『老人入門 ―いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックス|PLUS|新書361、2022年9月10日ワニブックス発行)を読んだ。
老いに対する正しい知識がないことで、過度に不安になったり、老いが加速したり、結果的に不幸な老い方をしている人が多くいます。
そこで本書では、老年医学の専門家による「これだけは知っておかないともったいない」という必須知識をわかりやすくまとめました。
「老いはゆっくりとしか進まない」
「筋肉は日常生活で維持できる」
「脳の機能は自由時間を楽しめば維持できる」
「認知症は過度に心配しなくていい」
「With病気という考え方で穏やかな老後を迎えられる」
「ほかの高齢者はどういう感情で生活を送っているのか?」
「老いは本来、幸せな時間」
「老いてからの人生はどんなに奔放でもいい」など――。
年齢を重ねるたびに“どんどん楽に、幸せになっていく”老い方の手引きをご紹介します!
老親をもつ世代にもおすすめです。
身近な老いを見守る経験が減ってきた現代は、どうしても老いに対して悪いイメージだけを持ってしまいがちです。実際にはそんなことはありません。老いはほとんどの義務やノルマから解放される自由な時間をたっぷりと与えてくれます。(p27)
老人入門というのは、いつかは受け入れるしかない老いの人生の中に(多くは80代後半)、いかに自分の希望や願いを育てていくかを計画することでもあるのです。(p33)
脳の委縮は避けられない。しかし、脳の機能は、神経細胞同士の無数のネットワークの働きを保てば維持される。
例えば、ハイレベルでなくても、おしゃべりでも、自分がワクワクすることが刺激になり、ネットワークが強化され、脳機能は維持される。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
80歳と立派な老人、立派じゃないけど、である私には、既に実感していたり、聞いていたことがある事実、お勧めが並んでいる。しかし、内容はうなずけることばかりであり、再認識することは有効だろう。
ワクワクすることを求め、新たなことに好奇心を持つ。改めてチャレンジしたい。特にコロナで同世代の人との触れ合いが少なくなったままなのをなんとかしないと。先日何回目かのコロナワクチンも打ったし、関係ないけど帯状疱疹ワクチンも打つし、活動的にならねば。
本の後半にある、「薬はなるべく飲むな」「健診は有害だ」「車は運転しろ」との和田さんの従来からの主張は、まあ、その本意の部分だけをあくまで参考にとどめておこう。
もう十分長生きしている私は、桐島洋子さんが言っていた「この歳になって、身体に良いからといって、もうまずいものなんて食べたくない」という考えには賛成なのだが。
以下、メモ。
廃用症候群(廃用委縮):筋肉や関節が使わなくなると衰えて日常生活も不自由になる。1週間の入院で下肢の筋肉は20%も委縮する。 → 自由時間を楽しんで動き、身体の機能を維持する。
脳というものは、脳細胞が減ってくるので委縮することじたいは避けられない。脳の萎縮と実際の認知機能の低下は必ずしも一致しない。脳の機能は細胞の数ではなく、神経細胞同士の間に張り巡らされた回路、無数のネットワークの働きで維持される。
例えばおしゃべりでも、自分が楽しいことをすれば、頭を使うことになり、ネットワークは強化される。
ハイレベルでなくても、自分がワクワクすることが刺激になる。
脳の萎縮は、感情を司る前頭葉から始まるので、老いは意欲を低下させる。初めての体験、ワクワクする楽しいことをして、前頭葉を刺激し、機能低下を防ごう。
完全主義を止めて、自分にあまく、おおらかになろう。
認知症は老化現象のひとつで病気ではない。80代後半で4割、90歳を超えると6割の人は認知症と診断されてしまう。いずれはボケるとしても、85歳までは逃げ切りたい。90代でもニコニコしていれば周囲は気が付きません。
認知症はある日を境に始まるのではなく、長いグレーゾーン(MCI軽度認知障害)があってゆっくりと症状が進む。MCIの段階で悲観的になって周囲への興味も好奇心も失ってしまうと、感情が動かされなくなるので前頭葉の老化が進み、認知症に進む可能背が高まる。
高齢者はタンパク質が不足しがちなので、肉を食べる必要がある。
高齢者の「うつ」は、もうだめだとかいううつ気分があまり目立つことがなく、「腰が痛い」「便秘が治らない」といった身体的な症状を訴えることが多く、歳だけら仕方ないとなりがちで、認知症を誘発させやすい。