一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

長崎旅行2015・4「マジックつづく」

2015-12-19 19:36:52 | 旅行記・九州編
「ブラザー・トムさん」
マスターが私を見て言う。マスターの特技はお客を芸能人に譬えることで、女性客は美人女優に譬えられることが多い。それはホメすぎでしょう…という名前が出ても、女性客は満更でもないようで、笑っている。
私は近眼なので、メガネをかけていてもこの位置からカードの数字が見えるか不安だった。それを見透かしてか、マスターが「肩に力が入ってますね」。そして「金鳥蚊取り線香」のパッケージを見せる。それをくしゃくしゃにして、「キンチョーをほぐす」。マスター鉄板ネタのひとつで、ドッと笑いが起こった。
私へはオモチャのスコップが渡された。ポータブルプレーヤーからはウルトラセブンの主題歌が流れる。マスターがカードを切り、私はその途中でストップならぬ「スコップ!」を掛けるのだ。するとマスターがそのカードをカウンターに置き、計4枚が並ぶ。それをめくるとあら不思議…という仕掛けだ。
これで私の26番棒はお役御免でカウンターに置かれ、もう引かれることはない。私はあんでるせんにおいてはクジ運がいい方で、かなり面白いマジックに参加させてもらっている。「戦利品」も多い。しかしこのマジックは軽めの方で、若干物足りなさが残った。
私の前は3歳児を抱えたお母さんが座っているが、あんでるせんは中学生以下の来店は不可、と聞いたことがある。真偽はよく分からないが、現在は黙認状態なのかもしれない。幼児はおとなしくしていた。
その後もカードマジックは続く。客の反応は上々で、右奥の椅子の上に立っている女性などはマジックが披露されるたび、「げえぇっ!!」「エエエーッ!!」「おーーーっ!!」と、凄まじい驚愕ぶりである。私はその様子を見るだけで愉快になる。
確かにマスターのマジックは素晴らしい。しかし私が本当に感心するのはマスターの話術で、淡々としゃべっているだけなのに、その間(ま)、言葉のチョイスなどが絶妙で可笑しいのだ。その合間に含蓄ある言葉を述べる。
「バイオリンを抱えた若者が、ニューヨークを歩いていました。彼はカーネギーホールに行きたいんですね。彼は傍らにいた老人に、カーネギーホールに行くにはどうすればいいですか、と聞きました」
私たちは答えを待つ。「老人は、バイオリンがうまくなれば行けるよ、と答えました」
彼が目を瞠る腕になれば演者側になり、関係者が連れてってくれるというわけだ。
これを将棋に言い換えると、
「陣屋に行くにはどうすればいいですか」
「将棋を頑張れば行けるよ」
ということになる。
マスターと3番の女性がカードの一部をちぎり、それをカードの束に戻す。マスターがヘアゴムを求めると、3番の女性が束ねている髪から解いた。
「そのしぐさが男性はグッとくるんですね」
これには大笑いした。
ヘアゴムで束ねたカードを、壁に掛けてある額縁に投げると、そのちぎれたカードが中に入った。
これもかつてテレビで観たことがあるが、ライブで見ると迫力が違う。ちなみにこのカードは、1週間ぐらいしたら客の元へ戻るという。
俄かには信じがたいが、マスターの言葉だから信憑性がある。
数十分のカードマジックを終え、ここからアラカルトだ。
男性芸能人のカードが提示される。その数7枚(人)で、指名された女性が、好みの順に1位から5位までを選ぶ。もちろんマスターには見えないようにだ。しかしこの順位も、マスターはピタリと当ててしまう。
かつては5枚のカードから1位を当てるだけだったが、グレードアップした。なおカードには女性芸能人版もあり、私はこれを一度体験したいのだが、まだ叶っていない。
例の棒で、女性が指名された。彼女が当たったのはいわゆる「宿命」で、今度は彼女に動物の絵を描いてもらい、それをマスターが当てるのだ。昨年私が当たったヤツだ。
女性は犬らしき絵を描いたが、それとまったく同じ絵がマスターの用意した財布から出てきて、この時は客の興奮が最大になった。
「ヒトは30歳になれば20歳の時が若かったと思い、40歳になれば30歳の時が若かったと思いますね。50歳になれば40歳が、60歳になれば50歳が若いと思う」
これも毎年の「説法」で、10年後の自分を想像すれば、10歳若い現在の自分が何をすべきか、おのずと見えてくる、というわけだ。私が1999年に初めて訪れた時、この話は聞いた。当時私は30代で、この言葉の意味を深く理解しながら、その後私は何もしなかった。
その結果がこのザマである。結局私は、堕落しているのだ。
また別の女性が指名される。彼女の生年月日、氏名をマスターが当てるのだが、その誕生日は私たちお客が当てるのだ。この方法がまたすごく、毎回驚かされる。もちろん女性の氏名も一発で当ててしまい、もう、何が何だかまったく分からない。
この催しは一応マジックという括りだけれども、こういうのを目の当たりにすると、本当にマスターは超能力者なんじゃないかと思えてくるのだ。
「来年の2月まで、カウンター席は全部予約で埋まっています」
とマスター。あんでるせんの信奉者は全国に数多いるが、何回も訪れていいのか。これには「1回来れば(マスターは)十分(と思っている)」「半年間は空けなければいけない」など諸説ある。しかし昨年などは、客のおばちゃんが2か月後の予約をしていた。
「だからカウンター席に座りたければ、その後ということになります。でも、また店に来てほしくなったら、私が(テレパシーで)呼びますから」
マスターが客の来店に言及するのは珍しく、この言葉は初めて聞いた。
(つづく)
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