まず、2007年6月3日に東京・新宿の路上で行われた設立イベントの模様が流れる。
これが私とLPSAとのファーストコンタクトで、私は女流棋士を間近で拝見するのも初めてだった。皆さんLPSAのTシャツを着用して親しみやすさを演出し、アイドルユニット・サバイブのミニコンサートや、石橋幸緒女流四段VS天才少女・竹俣紅ちゃんの飛車落ち対局など、内容も盛りだくさん。私は一遍にLPSAのファンになったのだった。
場面が変わり、米長邦雄永世棋聖が映る。もし永世棋聖が存命で会長職にあったら、今回果たして出席しただろうか。私はしたと思う。
かつてはLPSAの存在を疎ましく思ったことがあるかもしれないが、もういがみあっている時代ではない。普及という同じ目標に向かって、手を携える気持ちが勝ったと思うからだ。
記念上映会が終わってしばらくすると、島井咲緒里女流二段とフーリオ君が壇上に上がった。「ネコSHOGIバトル」のPRである。フーリオ君ともこれまた、最近はよく顔が合う。
将棋ペンクラブ幹事・三上氏の姿が見えた。三上氏も交流会からの連投だが、半分公務が入っている。
私のもとへ、中倉彰子女流二段が挨拶に来た。
「いやあ中倉先生、相変わらずお綺麗で。Wさんともよく話すんですが、中倉先生は洗練された美しさですよねえ」
私としては最大限に褒めたつもりだが、彰子女流二段はそれほどうれしそうでない。いわゆる「室谷由紀タイプ」で、ここは美貌ではなく、「いつつ」や「しょうぎのくにのだいぼうけん」で持ち上げたほうがよかった。
彰子女流二段は忙しそうで、ほかに移ってしまった。
次にいらしたのは渡部愛女流初段である。今日は赤系の振袖で、ひときわ艶やかだ。
「(6月の)指導対局はよろしくお願いします」
と言う渡部女流初段が凄まじく美しい。貌がほんのり朱に染まり、渡部女流初段がこんなに美人だとは思わなかった。これでは全国に愛ファンが生まれるわけである。
「社団戦に出てくださいネ。(1日目の翌日は)私の誕生日ですから」
と渡部女流初段が言う。LPSAのブースで待ってますから、ということだろう。
「ハイ」
と私の代わりにKun氏が答えて、私はいよいよ社団戦に出なければならなくなった。
となれば、渡部女流初段へのバースデープレゼントだ。今年は何をプレゼントしようか。
その後もしばし雑談をしたが、とても幸せなひとときだった。
今年は久しぶりに見る顔も多い。LPSAファン氏の顔が見える。けやきカップ以来だが、こちらから向かうのも億劫だ。
「大沢さんでしょうか」
声を掛けられて振り向くと、見慣れぬ青年氏である。「大野先生のブログでお顔を拝見しておりましたので、ご当人かなと…」
聞くと、大野八一雄七段は永年、ある中・高等学校の講師をしていたのだが、青年氏はそこの生徒だったという。それが縁で、私のブログも読んでくれていたらしかった。
実はこういうパターンは時々あるが、自分が有名になった気分になり、ちょっと誇らしい。作家や芸能人がファンに声を掛けられた時も、こんな気分になるのではと思った。
「社団戦は出られるんですよね」
青年氏の口からも社団戦という単語が出てビックリ。聞けば彼も3部で出場するという。
私などは大野教室で大した戦力にならないが、どうなのだろう。
辺りを見回すと、男性棋士の姿もある。左前方には中村修九段がいる。この機会だから、話しかけてみた。
「中村先生こんにちは。毎年花みず木女流オープンで、先生の解説を楽しませてもらっています」
「ありがとうございます」
「私『将棋マガジン』の創刊号で中村先生を初めて見まして…。当時は先生が奨励会3級でしたか、佐伯先生と写っていらして…。あ、奨励会員は強いんだな、と。だから私の奨励会員のイメージは中村先生なんです」
「そんな年齢? あなたはおいくつ?」
「51です」
「私は54」
「ウチはおカネがなかったんで、昔の将棋マガジンを捨てずに、いつまでも読んでいたんです」
私は続ける。「だから先生が六段時代に王将を獲られた時も、先生の実力からして、やっぱりな、という感じでした」
もう、ほとんど私がしゃべっている。「昭和55年組は強かったですもんねえ。でも皆さん、今は降級してしまって…」
ここまではまあよかったが、私はうっかり口をすべらす。「先生もA級は無理でしたもんねぇ…」
言った瞬間、しまったと口をつぐんだが、中村九段の回答は明快だった。
「私は今もA級を狙っています」
きっぱりと言った。「とりあえず(B級2組を)昇級して、A級が見える位置に行く。勝負はそれからですね」
「おおー、素晴らしい、失礼しました!」
「今期は太地戦…。(1回戦の中村)太地ですね。ここを勝てれば…」
中村九段が、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「A級順位戦の最終局は、いろいろ中継されるじゃないですか。あれはA級棋士が主役ですよね。私は中村先生に、あの登場人物のひとりになってもらいたいんです」
「がんばります」
と中村九段は言った。
今期の中村九段には期待してみよう。
(つづく)
これが私とLPSAとのファーストコンタクトで、私は女流棋士を間近で拝見するのも初めてだった。皆さんLPSAのTシャツを着用して親しみやすさを演出し、アイドルユニット・サバイブのミニコンサートや、石橋幸緒女流四段VS天才少女・竹俣紅ちゃんの飛車落ち対局など、内容も盛りだくさん。私は一遍にLPSAのファンになったのだった。
場面が変わり、米長邦雄永世棋聖が映る。もし永世棋聖が存命で会長職にあったら、今回果たして出席しただろうか。私はしたと思う。
かつてはLPSAの存在を疎ましく思ったことがあるかもしれないが、もういがみあっている時代ではない。普及という同じ目標に向かって、手を携える気持ちが勝ったと思うからだ。
記念上映会が終わってしばらくすると、島井咲緒里女流二段とフーリオ君が壇上に上がった。「ネコSHOGIバトル」のPRである。フーリオ君ともこれまた、最近はよく顔が合う。
将棋ペンクラブ幹事・三上氏の姿が見えた。三上氏も交流会からの連投だが、半分公務が入っている。
私のもとへ、中倉彰子女流二段が挨拶に来た。
「いやあ中倉先生、相変わらずお綺麗で。Wさんともよく話すんですが、中倉先生は洗練された美しさですよねえ」
私としては最大限に褒めたつもりだが、彰子女流二段はそれほどうれしそうでない。いわゆる「室谷由紀タイプ」で、ここは美貌ではなく、「いつつ」や「しょうぎのくにのだいぼうけん」で持ち上げたほうがよかった。
彰子女流二段は忙しそうで、ほかに移ってしまった。
次にいらしたのは渡部愛女流初段である。今日は赤系の振袖で、ひときわ艶やかだ。
「(6月の)指導対局はよろしくお願いします」
と言う渡部女流初段が凄まじく美しい。貌がほんのり朱に染まり、渡部女流初段がこんなに美人だとは思わなかった。これでは全国に愛ファンが生まれるわけである。
「社団戦に出てくださいネ。(1日目の翌日は)私の誕生日ですから」
と渡部女流初段が言う。LPSAのブースで待ってますから、ということだろう。
「ハイ」
と私の代わりにKun氏が答えて、私はいよいよ社団戦に出なければならなくなった。
となれば、渡部女流初段へのバースデープレゼントだ。今年は何をプレゼントしようか。
その後もしばし雑談をしたが、とても幸せなひとときだった。
今年は久しぶりに見る顔も多い。LPSAファン氏の顔が見える。けやきカップ以来だが、こちらから向かうのも億劫だ。
「大沢さんでしょうか」
声を掛けられて振り向くと、見慣れぬ青年氏である。「大野先生のブログでお顔を拝見しておりましたので、ご当人かなと…」
聞くと、大野八一雄七段は永年、ある中・高等学校の講師をしていたのだが、青年氏はそこの生徒だったという。それが縁で、私のブログも読んでくれていたらしかった。
実はこういうパターンは時々あるが、自分が有名になった気分になり、ちょっと誇らしい。作家や芸能人がファンに声を掛けられた時も、こんな気分になるのではと思った。
「社団戦は出られるんですよね」
青年氏の口からも社団戦という単語が出てビックリ。聞けば彼も3部で出場するという。
私などは大野教室で大した戦力にならないが、どうなのだろう。
辺りを見回すと、男性棋士の姿もある。左前方には中村修九段がいる。この機会だから、話しかけてみた。
「中村先生こんにちは。毎年花みず木女流オープンで、先生の解説を楽しませてもらっています」
「ありがとうございます」
「私『将棋マガジン』の創刊号で中村先生を初めて見まして…。当時は先生が奨励会3級でしたか、佐伯先生と写っていらして…。あ、奨励会員は強いんだな、と。だから私の奨励会員のイメージは中村先生なんです」
「そんな年齢? あなたはおいくつ?」
「51です」
「私は54」
「ウチはおカネがなかったんで、昔の将棋マガジンを捨てずに、いつまでも読んでいたんです」
私は続ける。「だから先生が六段時代に王将を獲られた時も、先生の実力からして、やっぱりな、という感じでした」
もう、ほとんど私がしゃべっている。「昭和55年組は強かったですもんねえ。でも皆さん、今は降級してしまって…」
ここまではまあよかったが、私はうっかり口をすべらす。「先生もA級は無理でしたもんねぇ…」
言った瞬間、しまったと口をつぐんだが、中村九段の回答は明快だった。
「私は今もA級を狙っています」
きっぱりと言った。「とりあえず(B級2組を)昇級して、A級が見える位置に行く。勝負はそれからですね」
「おおー、素晴らしい、失礼しました!」
「今期は太地戦…。(1回戦の中村)太地ですね。ここを勝てれば…」
中村九段が、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「A級順位戦の最終局は、いろいろ中継されるじゃないですか。あれはA級棋士が主役ですよね。私は中村先生に、あの登場人物のひとりになってもらいたいんです」
「がんばります」
と中村九段は言った。
今期の中村九段には期待してみよう。
(つづく)