7月28日(土)は埼玉県川口市の「大野教室」で飯野愛女流初段の指導対局が予定されていたが、台風の影響で中止・延期になった。私は予約をし損ねたので関係なかったが、その代替がこの14日(火)に行われることになり、今年も沖縄に行かない私は、幸いにも予約を入れることができた。
14日午後3時すぎ、川口に向かう。7月は6面指し×3コマだったが、今回は2コマに減じていて、私は16時の回に予約していた。
川口駅に着き、エキナカの立ち食い蕎麦屋でかけそばを食らう。久しぶりだ。かけそばはセコそうだが、後から来た客が2人、そろってかけそばを注文していた。
大野教室の前に着くと、すぐ前の母子も入室した。指し手は小学生低学年or幼稚園の男児で、母親は付き添いということだ。
入室すると、飯野女流初段がスタンバイしており、大野八一雄七段、W氏がいた。「久しぶり」とW氏。まったくその通りで、不義理を申し訳なく思う。
飯野女流初段は相変わらず魅力的だ。またNHK杯トーナメントでは先日から、藤田綾女流二段の代打として聞き手に出演した。ますます快調である。
私が飯野女流初段に教わるのは、前回(3月31日)のここ以来、2度目。勝敗はともかく、少しでもいい将棋を指すことを考えた。
まずは対局者が飯野女流初段とツーショット撮影。これはいい記念になる。
まだ開始まで時間があるが、駒だけ並べる。私が最後となり、並べ終わると
「手合いは……平手でしたよね」
と飯野女流初段。
「はい……先生も振りたいでしょ?」
「はい!」
ちょうど4時になりましたね、と飯野女流初段が言い、対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩(第1図)
6面は洋室で扇形に並んでおり、手前左からTok氏・飛香落ち、小学生低学年・六枚落ち、中学生?・平手、成人男性・角落ち、私・平手、成人男性・飛香落ちである。
本局、飯野女流初段の振り飛車は確定。私の居飛車明示にどこに振るかだが、6手目に三間に振った。
私は前局、石田流を促して▲2五歩を保留したが、今回は▲2五歩△3三角を決めてしまう。
さっきの小学生低学年の将棋はポンポン進み、端を破って▲1一香成。
しかし飯野女流初段が待ったをかける。この成りは取りにならないのだ。少年はちょっと考えて、▲1二香成と銀取りに成った。周りから
「(今は六枚落ちだけど)将来の名人になるかもしれない」
の軽口が飛ぶ。
そしてあまりにも優しい愛先生の指導に、彼になりたい、と思ったのは私だけではないだろう。
△9四歩の局面が作戦の岐路である。

第1図以下の指し手。▲3六歩△7二銀▲6八銀△5四歩▲5七銀左△5二金左▲4六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀(第2図)
対振り飛車の居飛車の醍醐味は作戦の選択で、第1図から持久戦を選べば、左美濃、玉頭位取り、やや変則的だが穴熊、などいろいろある。私は▲3六歩と突き急戦を明示した。持久戦だと時間がかかるので、速戦即決でいくのだ。
▲3七桂に△2二飛も仕掛けを防いで常道で、大山康晴十五世名人の将棋によく見られる。
私は▲5五歩~▲4五歩と仕掛ける。以前中倉宏美女流二段との指導対局で、この手順を逆にしたため、▲5五歩に△同角と取られて飛び上がったことがあった。
▲4六銀には△5六歩か△5四銀か。

第2図以下の指し手。△5四銀▲2四歩△同歩▲5五銀△同銀▲同角△4三金(途中1図)

▲4四歩△同金▲8八角△4五歩▲2五歩△3五歩▲2四歩△3六歩(第3図)
飯野女流初段は△5四銀と上がった。ここ△5六歩も本手で、それは▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角△4二金▲3五歩△同歩▲4七銀(参考1図)が進行の一例となる。

ほかの人の将棋は、中学生戦は飯野女流初段の振り飛車に、中学生君の穴熊。
左の成人氏は相居飛車で、成人氏が棒銀に出ているが、捌けそうにない。
局面。△5四銀の対抗はあまり好きではなく、この変化はあまり勉強していなかった。
とりあえず2筋の歩を突き捨て銀交換を果たしたが、下手は5筋の薄さが目立つ。
△4三金には▲4四歩から▲8八角と引き揚げた。
ここでA△5五歩かB△4五歩を予想した。Aは▲4五歩△4三金▲4四銀でどうか。またB△4五歩には▲2五歩の継ぎ歩で指せると思った。
飯野女流初段が歩を持つ、4五に打て! と念じたら、4五に打ってくれた。
私は予定通り▲2五歩と打ち、飯野女流初段も△3五歩の反撃。ここは△5二飛と転戦する手も考えたが、この手も厳しい。▲2四歩に△3六歩と、攻め合いになった。

(つづく)
14日午後3時すぎ、川口に向かう。7月は6面指し×3コマだったが、今回は2コマに減じていて、私は16時の回に予約していた。
川口駅に着き、エキナカの立ち食い蕎麦屋でかけそばを食らう。久しぶりだ。かけそばはセコそうだが、後から来た客が2人、そろってかけそばを注文していた。
大野教室の前に着くと、すぐ前の母子も入室した。指し手は小学生低学年or幼稚園の男児で、母親は付き添いということだ。
入室すると、飯野女流初段がスタンバイしており、大野八一雄七段、W氏がいた。「久しぶり」とW氏。まったくその通りで、不義理を申し訳なく思う。
飯野女流初段は相変わらず魅力的だ。またNHK杯トーナメントでは先日から、藤田綾女流二段の代打として聞き手に出演した。ますます快調である。
私が飯野女流初段に教わるのは、前回(3月31日)のここ以来、2度目。勝敗はともかく、少しでもいい将棋を指すことを考えた。
まずは対局者が飯野女流初段とツーショット撮影。これはいい記念になる。
まだ開始まで時間があるが、駒だけ並べる。私が最後となり、並べ終わると
「手合いは……平手でしたよね」
と飯野女流初段。
「はい……先生も振りたいでしょ?」
「はい!」
ちょうど4時になりましたね、と飯野女流初段が言い、対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩(第1図)
6面は洋室で扇形に並んでおり、手前左からTok氏・飛香落ち、小学生低学年・六枚落ち、中学生?・平手、成人男性・角落ち、私・平手、成人男性・飛香落ちである。
本局、飯野女流初段の振り飛車は確定。私の居飛車明示にどこに振るかだが、6手目に三間に振った。
私は前局、石田流を促して▲2五歩を保留したが、今回は▲2五歩△3三角を決めてしまう。
さっきの小学生低学年の将棋はポンポン進み、端を破って▲1一香成。
しかし飯野女流初段が待ったをかける。この成りは取りにならないのだ。少年はちょっと考えて、▲1二香成と銀取りに成った。周りから
「(今は六枚落ちだけど)将来の名人になるかもしれない」
の軽口が飛ぶ。
そしてあまりにも優しい愛先生の指導に、彼になりたい、と思ったのは私だけではないだろう。
△9四歩の局面が作戦の岐路である。

第1図以下の指し手。▲3六歩△7二銀▲6八銀△5四歩▲5七銀左△5二金左▲4六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀(第2図)
対振り飛車の居飛車の醍醐味は作戦の選択で、第1図から持久戦を選べば、左美濃、玉頭位取り、やや変則的だが穴熊、などいろいろある。私は▲3六歩と突き急戦を明示した。持久戦だと時間がかかるので、速戦即決でいくのだ。
▲3七桂に△2二飛も仕掛けを防いで常道で、大山康晴十五世名人の将棋によく見られる。
私は▲5五歩~▲4五歩と仕掛ける。以前中倉宏美女流二段との指導対局で、この手順を逆にしたため、▲5五歩に△同角と取られて飛び上がったことがあった。
▲4六銀には△5六歩か△5四銀か。

第2図以下の指し手。△5四銀▲2四歩△同歩▲5五銀△同銀▲同角△4三金(途中1図)

▲4四歩△同金▲8八角△4五歩▲2五歩△3五歩▲2四歩△3六歩(第3図)
飯野女流初段は△5四銀と上がった。ここ△5六歩も本手で、それは▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角△4二金▲3五歩△同歩▲4七銀(参考1図)が進行の一例となる。

ほかの人の将棋は、中学生戦は飯野女流初段の振り飛車に、中学生君の穴熊。
左の成人氏は相居飛車で、成人氏が棒銀に出ているが、捌けそうにない。
局面。△5四銀の対抗はあまり好きではなく、この変化はあまり勉強していなかった。
とりあえず2筋の歩を突き捨て銀交換を果たしたが、下手は5筋の薄さが目立つ。
△4三金には▲4四歩から▲8八角と引き揚げた。
ここでA△5五歩かB△4五歩を予想した。Aは▲4五歩△4三金▲4四銀でどうか。またB△4五歩には▲2五歩の継ぎ歩で指せると思った。
飯野女流初段が歩を持つ、4五に打て! と念じたら、4五に打ってくれた。
私は予定通り▲2五歩と打ち、飯野女流初段も△3五歩の反撃。ここは△5二飛と転戦する手も考えたが、この手も厳しい。▲2四歩に△3六歩と、攻め合いになった。

(つづく)