第90期棋聖戦は、藤井聡太七段と里見香奈女流四冠が予選で当たることになった。
その対局が24日(金)にあったのだが、同日、渡部愛女流王位もまた男性棋士に挑んでいた。第66期王座戦予選で、相手は木下浩一七段である。
木下七段は1988年4月、弱冠20歳で四段昇段。昨日29日に51歳になった。2008年度に順位戦C級2組で2つめの降級点を取り、その期をもってフリークラスに転出した。通算勝率は0.4255で、全棋士で計ると下位の方だ。だが感覚的には、勝ったり負けたりであろう。それなのに「転出」とはがっかりで、最後まで踏ん張れなかったものかと思う。
だが木下七段も脂の乗っていた時期は竜王戦で何度か昇級しており、もちろん実力はある。渡部女流王位にとっても難敵ではあるのだが、王座戦は持ち時間が5時間なので、読みの不足を時間でカヴァーできる。里見女流四冠の勝敗は予想するまでもないが、渡部女流王位のほうは、かなり期待勝率が高かった。
藤井-里見戦の取材攻勢の陰で、ひっそりと行われている男女戦。私はもちろん、後者のカードに注目したのだった。
王座戦は連盟かどこかの中継があったらしいが、私は契約していないので、まったく戦況が分からない。ネット掲示板に張り付けば何か情報が得られるだろうが、私はそこまでヒマではない。午後からは職安に行かねばならないのだ。
藤井-里見戦は、藤井七段が勝った。こちらは持ち時間1時間だから、昼過ぎに終わるのだ。
形勢は里見女流四冠が中盤までよかったようだが、藤井七段は「最後は私が勝つ」と思って指しているから、当然この結果になる。
木下-渡部戦の勝敗を知ったのは結局夜で、渡部女流王位の勝ち!! 2015年2月、三枚堂達也四段戦以来の男性棋戦勝利となった。
この木下戦の記譜は、ネット上で見つけたので、再生してみた。
先手が木下七段で、中飛車に振った。最初、私は振り飛車側を渡部女流王位にしていて、愛ちゃん、ずいぶん元気に指してるなあ、と思ったら逆だった。
渡部女流王位は対振り飛車で穴熊が多い。それで穴熊の雰囲気にしたら、木下七段が速攻を仕掛けた、という図だが、渡部女流王位もうまく応接する。
私には手の意味などまったく分からないが、感心したのは、木下七段が▲4四同角と金取りに出た手に対し、渡部女流王位が△3七歩と反撃に出た手だ。
この△3七歩が渡部流手裏剣の歩で、以前も書いたことがあるが、渡部女流王位は歩の使い方が本当にうまい。今回も、ともすれば守勢に陥りそうなところを、この一打で攻守所を代えてしまったのだ。
△3七歩以下は、▲3七同金△3六歩▲同銀△5七銀▲9八飛△3六金▲同金△4六銀成(第2図)と進んだ。
以下、渡部女流王位が巧妙に手駒を入手し、最後は木下玉を即詰みに討ち取ったのだった。
タイトルを奪取してからの渡部女流王位は星が集まらず、私たち愛ファンもやきもきした。しかし今回は、不調脱出のターニングポイントとなりそうな、大きな勝ちだったのではあるまいか。
渡部女流王位には、今後も各棋戦で活躍してもらいたい。
なお里見女流四冠は、27日の王座戦で浦野真彦八段に勝ち、直近の男性棋士との対戦成績を4勝1敗とした。プロ編入試験の資格獲得まで、あと6勝4敗である。
その対局が24日(金)にあったのだが、同日、渡部愛女流王位もまた男性棋士に挑んでいた。第66期王座戦予選で、相手は木下浩一七段である。
木下七段は1988年4月、弱冠20歳で四段昇段。昨日29日に51歳になった。2008年度に順位戦C級2組で2つめの降級点を取り、その期をもってフリークラスに転出した。通算勝率は0.4255で、全棋士で計ると下位の方だ。だが感覚的には、勝ったり負けたりであろう。それなのに「転出」とはがっかりで、最後まで踏ん張れなかったものかと思う。
だが木下七段も脂の乗っていた時期は竜王戦で何度か昇級しており、もちろん実力はある。渡部女流王位にとっても難敵ではあるのだが、王座戦は持ち時間が5時間なので、読みの不足を時間でカヴァーできる。里見女流四冠の勝敗は予想するまでもないが、渡部女流王位のほうは、かなり期待勝率が高かった。
藤井-里見戦の取材攻勢の陰で、ひっそりと行われている男女戦。私はもちろん、後者のカードに注目したのだった。
王座戦は連盟かどこかの中継があったらしいが、私は契約していないので、まったく戦況が分からない。ネット掲示板に張り付けば何か情報が得られるだろうが、私はそこまでヒマではない。午後からは職安に行かねばならないのだ。
藤井-里見戦は、藤井七段が勝った。こちらは持ち時間1時間だから、昼過ぎに終わるのだ。
形勢は里見女流四冠が中盤までよかったようだが、藤井七段は「最後は私が勝つ」と思って指しているから、当然この結果になる。
木下-渡部戦の勝敗を知ったのは結局夜で、渡部女流王位の勝ち!! 2015年2月、三枚堂達也四段戦以来の男性棋戦勝利となった。
この木下戦の記譜は、ネット上で見つけたので、再生してみた。
先手が木下七段で、中飛車に振った。最初、私は振り飛車側を渡部女流王位にしていて、愛ちゃん、ずいぶん元気に指してるなあ、と思ったら逆だった。
渡部女流王位は対振り飛車で穴熊が多い。それで穴熊の雰囲気にしたら、木下七段が速攻を仕掛けた、という図だが、渡部女流王位もうまく応接する。
私には手の意味などまったく分からないが、感心したのは、木下七段が▲4四同角と金取りに出た手に対し、渡部女流王位が△3七歩と反撃に出た手だ。
この△3七歩が渡部流手裏剣の歩で、以前も書いたことがあるが、渡部女流王位は歩の使い方が本当にうまい。今回も、ともすれば守勢に陥りそうなところを、この一打で攻守所を代えてしまったのだ。
△3七歩以下は、▲3七同金△3六歩▲同銀△5七銀▲9八飛△3六金▲同金△4六銀成(第2図)と進んだ。
以下、渡部女流王位が巧妙に手駒を入手し、最後は木下玉を即詰みに討ち取ったのだった。
タイトルを奪取してからの渡部女流王位は星が集まらず、私たち愛ファンもやきもきした。しかし今回は、不調脱出のターニングポイントとなりそうな、大きな勝ちだったのではあるまいか。
渡部女流王位には、今後も各棋戦で活躍してもらいたい。
なお里見女流四冠は、27日の王座戦で浦野真彦八段に勝ち、直近の男性棋士との対戦成績を4勝1敗とした。プロ編入試験の資格獲得まで、あと6勝4敗である。