一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

ベテランの底力

2018-08-03 01:09:16 | 将棋雑記
今年の順位戦C級1組は、前期B級2組から青野照市九段と森下卓九段が降級してきて、A級経験者が高橋道雄九段、島朗九段、塚田泰明九段、田中寅彦九段と合わせ6人になった。これはB級2組の元A級5人を上回る。
先月31日はその3回戦があったのだが、6人の結果は次の通りとなった。

○森下九段(52)VS●日浦市郎八段(52)
●青野九段(65)VS○船江恒平六段(31)
○高橋九段(58)VS●佐々木勇気六段(23)
○島九段(55)VS●阪口悟六段(39)
○塚田九段(53)VS●豊川孝弘七段(51)
○田中九段(61)VS●福崎文吾九段(58)

合計5勝1敗は見事。6人とも齢50を過ぎて体力の低下は否めないが、読みの力はまだまだ健在だ。中でも高橋九段が、35歳年下・気鋭の佐々木六段を破ったのは驚いた。
佐々木六段との記譜を見ると、横歩取り模様に進んだが、先手の高橋九段が15手目に横歩を取らず、2八に飛車を引いた。それならと佐々木六段が横歩を取り、高橋九段は▲7七角。そこから銀冠に組んで、高橋九段好みの将棋になった。私は1986年8月6日に指された、第25期十段リーグ・中原誠名人との一戦を思い出したものである。

私の記憶が確かならば、この将棋の観戦記は読売記者の平井輝章氏で、名文だった。
高橋-佐々木戦に戻るが、以下の進行はプロならではで、私には指し手の意味がまったく分からない。途中飛車角交換になり、高橋九段が角を2枚手持ちにしたが、これ、私たちレベルの将棋だと、飛車を2枚持ったほうがかなりの確率で勝つ。
そして感心というか感嘆したのが、63手目の▲3五歩(打)だった。

これはもし△同飛なら▲3六歩△3四飛(△3六同飛は▲1八角)と飛車先を押さえて▲1一角成とする狙い。よって佐々木六段は△2四飛と抵抗したが、▲2五歩△1四飛に▲1一角成が実現し、「よく分からないけど、高橋九段は指していて楽しいだろうなあ」という進行になった。
ちなみに私なら、図の前にすぐ▲1一角成に飛びついて、△3七飛成で負けるだろう。
本譜は以下、高橋九段の重厚な攻めが冴え、快勝となった。う~ん、強い!
なお高橋九段は前期も1回戦で、若手の永瀬拓矢七段に土を付けている。これがベテランの底力と言うべきか。

話が変わるが、大山康晴十五世名人を語る時、現代に大山十五世名人が舞い降りたら、どのクラスで通用するか、という夢物語がある。
これは大山十五世名人の年齢をいくつに想定するかで判断が変わってくるが、7月26日の記事でも紹介したように、大山十五世名人は、最晩年まで若手棋士に伍して戦っていた。
その当時の若手棋士が、ベテランとなった今も活躍する。このことが大山十五世名人の棋力を証明する一助になる。
今後もベテラン棋士の活躍に期待したい。
コメント
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