一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

3月21日の4時から男(中編)

2020-04-11 00:07:16 | 新・大野教室

第4図以下の指し手。▲6八香△6五桂▲6一竜△5七桂成▲5九金引△同竜▲同金△3七歩▲同桂△4七銀(第5図)

第4図で▲2六香がチラッと浮かんだが、▲6八香と据えた。これで▲6二歩成~▲5二とが受けにくい。これは勝ったんじゃないかと思った。
だが△6五桂が用意の跳躍。私はこの筋に気をつけていたのに、喰らってしまった。ただ▲6一竜と寄り次に▲6二歩成を見て、マイナスばかりでもない。
佐藤氏の△5七桂成に▲5九金と引いて十分と思いきや、佐藤氏は△同竜と切った。もはや後手は引けないから当然の一手なのだが、私は少なからず動揺した。そして△3七歩から△4七銀と食いつかれては、流れは後手である。どうしてこうなってしまったのだろう。
後手は遊び気味の△7三桂が5七に成れたのが大きかった。

第5図以下の指し手。▲2九銀△3六銀成▲6二歩成△4七成桂(途中図)

▲3八歩△4六成桂▲4八金△4七金(第6図)

ここで▲6二歩成は遅い気がして、▲2九銀と引いた。佐藤氏の攻めを切らそうとしたのだ。
佐藤氏は3七の地点を執拗に狙ってくる。
△4七金を▲同金と取ったらどうなるのだろう。

第6図以下の指し手。▲1八玉△3七成桂▲同歩△同金▲2八銀打△3五桂▲2五飛△2七桂成▲同銀△同金▲同飛△2六銀▲5七飛(第7図)

第6図では▲4七同金△同成桂▲2三角成△同玉▲2四銀△同玉▲2五飛を考えたが、△3三玉で1枚足りないと思った。
そこで▲1八玉と戦場から避けた。そして4手後▲2八銀打。△同金なら▲同銀で一息つくし、△4八金は後手が金得でも金がそっぽにいっていけない。
△3五桂には▲2五飛が詰めろ逃れの詰めろ。これで後手は手がないと思ったが、佐藤氏は△2七桂成から突撃してくる。このあたり、切れそうで切れない佐藤氏の攻めに、いささか持て余していた。
それでも▲5七飛までとなって、切らしたつもりだったのだが……。

第7図以下の指し手。△3七角成▲同金△同銀成▲同飛△同成銀▲2三角成△同玉▲5六角△3四歩▲2四歩△3三玉▲2二銀△2四玉▲2五歩△同玉▲2六歩△同玉▲3八桂△3五玉▲4七桂△2四玉(投了図)
まで、佐藤氏の勝ち。

第7図で△3七角成を軽視した。以下△3七同成銀まで、先手に受けがなくなったようだ。
私は▲2三角成から突撃したが詰まず、無念の投了となった。

圧倒的優勢から負けて私は言葉がないが、佐藤氏はすぐ局面を戻し、▲4七桂に代えて▲2六金を示した。ただこれでも後手玉は詰まず、先手玉に凌ぎもなかった。
大野八一雄七段を交えて、△7五歩の仕掛けから感想戦となる。
「後手番だから仕掛けも難しいんだけど……」
と佐藤氏。△2二角のところでは単に△8六同銀が勝ったようで、どの変化も居飛車十分だった。
決定的に疑問手の烙印を捺されたのは第2図からの▲7三歩成を△同銀と取ったことで、▲7四銀からの捌きを誘発してしまった。よって△7三同銀では、△7三同桂で後手が十分だったようだ。
そして第4図、私は▲6八香と打ったが、大野七段は▲2六香を推奨した。▲6八香は方向違いで、香は玉頭に打つのが筋だという。このあたり、私はプロの感覚に唸るばかりである。
第5図から▲2九銀も疑問で、ここは▲6二歩成と攻め合って先手勝ち、が佐藤氏の見解。この辺の速度争いはしっかり読まねばならなかった。
さらに△4七成桂(途中図)のとき、私は当然のように▲3八歩と打ったが、この成桂は詰めろでない可能性があるという。
調べると▲5二と△3七成桂(△3七成銀は▲1八玉)▲3九玉△4七桂▲4九玉△5九桂成▲同玉で、金2枚では確かに詰まない。この玉が詰まないのか! 確かに▲3四角がうまく利いている。
「9八銀は成るんだったなあ……」
と佐藤氏。まさかこの銀が詰みに関わってくるとは思わない。
「アッ、詰んだ」と大野七段がつぶやく。▲5九同玉以下△4八成桂▲6九玉△7九金▲同玉△8九銀成(参考A図)。しかしこれは▲同角がある。「あっ」と、大野七段が呆れたように横を向いた。

ただし参考A図以下▲8九同角△8八金▲6九玉△8九金に、後手玉が詰むかどうか。詰まない気がするのだが……。(4月12日註:読者から、△8九銀成▲同角△8八金▲6九玉に、△7七桂(△5七桂)で詰み、のご指摘がありました。まさにその通りで、絶句です。1手詰が見えないとは……。検討不足をお詫びいたします)
さらに第6図からの▲1八玉も逸機で、ここは▲4七同金△同成桂に▲2三角成があったらしい。私は足りないと見ていたのだが、佐藤氏は△2三同玉▲2四銀△同玉▲2五飛△3三玉▲2三金△4四玉▲4五歩△5三玉▲5二と(参考B図)まで示した。なるほどこうなれば先手勝ちである。

なんだい……。私はおのが読みの甘さに呆れるばかり。▲2三角成を読んだらそのあとは一本道。なぜ▲2三金まで考えなかったのか。
さらに検討は進み、△3五桂に
「▲2五飛が詰めろ逃れの詰めろなので自信があった」
と私が言ったら、佐藤氏は
「ここに飛車を使ってくれるならまだ望みはあると思った」
と言った。この相違が実戦の面白さだ。
だが以下を進めると佐藤氏の主張が正しかったようだ。
ただ△3七同成銀に私は▲2三角成と突撃したが、ここは黙って▲2八歩(参考C図)があったという。

(つづく)
コメント (4)
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