何と、「小樽雪あかりの路」は、9日(日)からの開催だった。8日(土)は前夜祭らしい。
いやこれは大誤算である。このイベントは開催期間が長いので、とっくに始まっていると思っていた。
私は小樽運河の浮き玉、運河沿いや旧手宮線のキャンドル群を楽しみにしていたのに、どうしたらいいのか。
列車はもうすぐ小樽築港に着く。運河自体はもちろん存在しているが、どうせなら祭りの時に楽しみたい。いまから引き返して、さっぽろ雪まつりを見ようか。
でもここまで来たら、小樽へ行くしかないだろう。私は予定通り、南小樽で下車した。
念のため、オヤジにもう一度電話を掛けたが、やはり繋がらない。私は駅前の「砂場」に入った。ここの蕎麦が美味いのだ。
壁には、2008年にロケで訪れた大滝秀治のサインが掲げられていた。「僕は第九を指揮した」。指揮者の役だったのだろう。
大もり(800円)は、更科で美味かった。
店を出てからオヤジに電話を掛けると、やっと繋がった。それでオヤジに文机を探してもらったが、そこにANAカードはなかった。
これで万事休すである。考えたくはないが、出先で落としたのだろうか。とすると、駅の改札を抜けてから自宅までの間、となる。しかしなあ……。
私はメルヘン通りに出た。ちょうどいい黄昏時である。しかし、「平日」「コロナウイルス禍」「イベント前」とあってか、観光客は少なかった。
私は堺町通り商店街をぶらぶら歩く。積雪はやはり少ない。北一硝子などに入るのもいいが、どうせ何も買わないので先を急ぐ。
LeTAOの店頭では、スタッフ嬢が試食用のチョコレートを配っていた。私も欲しいが、みじめになるのでもらいに行かない。
港側の大通りに出て、小樽運河に着く。ここでも呆気に取られるくらい、観光客は少なかった。出店もなかった。
欄干の手前では、三脚を据えた観光客が撮影をしていた。……あれ? あいつ、昨年もこの場にいなかったか? 大勢の観光客でごった返しているのに、ヤツは「特等席」で踏ん張り、ずぅっとそこに居座っていた。韓国語をしゃべっていた気もするのだが、そうだ、ヤツに違いない。
……こいつは一体何なのだ? そんなに小樽運河に惚れ込んでいるのだろうか。それにしたって「特等席」に独占はまずいだろう。とっとどけ、ボケ!
明かりのない小樽運河は味気なかった。
私は脇の遊歩道を歩く。雪像群は造られているが、キャンドル群は設置されていない。つまり明かりがないので、雪像が全然映えていないのだ。
反対の方角からも小樽運河を愛で、小樽駅方面に向かう。途中で旧手宮線にぶつかったが、こちらも奥は真っ暗で、侵入が妨げられている。ここでお餅やジャガイモをいただきたかったのだが、イベント前では何をかいわんやだ。
小樽では寿司を食べたかったが、寿司屋通りまで行く気力がなくなった。もう札幌に行くことにする。
小樽駅着18時10分。次の快速エアポートは18時30分である。この時間を利用して、カード会社に連絡をしようと思う。屈辱だが、カードの再発行を依頼するのだ。しかしANAカードをよく失くす。これで3度目だ。
スマホを取り出すと、オヤジから電話が2回も来ていた。「28分前」とあるが、これは私と話した後に来たものだろうか。よく分からないが、掛け直す気力がなかった。
カード会社に電話をして、要件を伝える。その時、スマホが「ピッピッ」と鳴った。
これはオヤジからだろう。もしやANAカードが見つかった?
いや、それはない。私はその信号音を無視して、そのまま話を続ける。
「1月分は10,453円の引き落としがありますね? 未確定ですが」
と係の女性。
「それ、私が使ったんでしょうか? 誰かに使われた可能性あります?」
「それは分かりません」
私は恐ろしくなって、そのまま手続きを済ませた。再発行料1,100円はバカバカしい出費だ。カード番号も変わって面倒なのだが、仕方ない。
函館本線の下りに乗った。すると、オヤジから電話が来た。何と、ANAカードがあったというのだ! 旧工場(こうば)の事務室にあるテーブルの上に置かれている、ポケットティッシュの下に隠れていたという。
……あっ!!
そうだ、思い出した。私は出先でポケットティッシュをもらうのだが、あまりにもポケットに多くなったので、ある日まとめて取り出したのだ。その時、ANAカードも一緒に出してしまっていたのだ。
工場にあるはずがないと思い、こちらは探さなかったのだが、完全に盲点だった。
「お前に言われて、工場の机の抽斗とか探してみたんだけどさ、なくて、それでティッシュの下を漁ったら出てきたよ。すぐ電話をしたんだけど、繋がらなくて」
「……」
電話がバイブになっていて、まったく気付かなかった。あああ、あの時の電話に出ていれば!!!
私は気が遠くなった。
快速エアポート190号は、19時02分、札幌に着いた。私はKIOSKに入り、北海道時刻表(524円)を買う。最近はスマホの乗換案内で事足りるが、時刻表のほうがさすがに便利だ。
私は地下街を歩き、すすきのに出た。小樽でポシャッたので、とりあえず「氷の祭典」の鑑賞である。
今年の氷像は細工が見事で、なかなかに力作揃いである。観光客もそれなりに増え、ようやく観光らしくなってきた。
さて夕食を摂ろうと思う。「ラーメン山岡家」が美味そうだったが、ここは注文が券売機のチケット制で、待ち人が2人いた。こいつらがグズグズしているので、私は入るのを止めた。私はかなり短気なのである。
そのまま地下街を戻り、札幌駅近くまで来た。ここのグルメタウンで食すか。
杵屋に入ったが、ラストオーダーの時間が過ぎていて、断られた。吉野家もてんやも微妙に人が多く、入るのをためらわれた。
結局私はどこにも入らず、駅前のネットカフェ(アイカフェ・札幌ロイヤルセンチュリーホテル店)にチェックインした。21時06分の入店は、まずまずであろう。ネットカフェは、滞在時間の関係で、なるべく夜遅くがいいのだ。
フラットブースに入り、明日以降の本格的な旅行計画に入る。今回は出発前に、札幌と旭川の冬まつり情報を軽く検討したが、やはり出先のほうが熱が入る。旅行は、計画を立てている時がいちばん楽しいのだ。
(つづく)
いやこれは大誤算である。このイベントは開催期間が長いので、とっくに始まっていると思っていた。
私は小樽運河の浮き玉、運河沿いや旧手宮線のキャンドル群を楽しみにしていたのに、どうしたらいいのか。
列車はもうすぐ小樽築港に着く。運河自体はもちろん存在しているが、どうせなら祭りの時に楽しみたい。いまから引き返して、さっぽろ雪まつりを見ようか。
でもここまで来たら、小樽へ行くしかないだろう。私は予定通り、南小樽で下車した。
念のため、オヤジにもう一度電話を掛けたが、やはり繋がらない。私は駅前の「砂場」に入った。ここの蕎麦が美味いのだ。
壁には、2008年にロケで訪れた大滝秀治のサインが掲げられていた。「僕は第九を指揮した」。指揮者の役だったのだろう。
大もり(800円)は、更科で美味かった。
店を出てからオヤジに電話を掛けると、やっと繋がった。それでオヤジに文机を探してもらったが、そこにANAカードはなかった。
これで万事休すである。考えたくはないが、出先で落としたのだろうか。とすると、駅の改札を抜けてから自宅までの間、となる。しかしなあ……。
私はメルヘン通りに出た。ちょうどいい黄昏時である。しかし、「平日」「コロナウイルス禍」「イベント前」とあってか、観光客は少なかった。
私は堺町通り商店街をぶらぶら歩く。積雪はやはり少ない。北一硝子などに入るのもいいが、どうせ何も買わないので先を急ぐ。
LeTAOの店頭では、スタッフ嬢が試食用のチョコレートを配っていた。私も欲しいが、みじめになるのでもらいに行かない。
港側の大通りに出て、小樽運河に着く。ここでも呆気に取られるくらい、観光客は少なかった。出店もなかった。
欄干の手前では、三脚を据えた観光客が撮影をしていた。……あれ? あいつ、昨年もこの場にいなかったか? 大勢の観光客でごった返しているのに、ヤツは「特等席」で踏ん張り、ずぅっとそこに居座っていた。韓国語をしゃべっていた気もするのだが、そうだ、ヤツに違いない。
……こいつは一体何なのだ? そんなに小樽運河に惚れ込んでいるのだろうか。それにしたって「特等席」に独占はまずいだろう。とっとどけ、ボケ!
明かりのない小樽運河は味気なかった。
私は脇の遊歩道を歩く。雪像群は造られているが、キャンドル群は設置されていない。つまり明かりがないので、雪像が全然映えていないのだ。
反対の方角からも小樽運河を愛で、小樽駅方面に向かう。途中で旧手宮線にぶつかったが、こちらも奥は真っ暗で、侵入が妨げられている。ここでお餅やジャガイモをいただきたかったのだが、イベント前では何をかいわんやだ。
小樽では寿司を食べたかったが、寿司屋通りまで行く気力がなくなった。もう札幌に行くことにする。
小樽駅着18時10分。次の快速エアポートは18時30分である。この時間を利用して、カード会社に連絡をしようと思う。屈辱だが、カードの再発行を依頼するのだ。しかしANAカードをよく失くす。これで3度目だ。
スマホを取り出すと、オヤジから電話が2回も来ていた。「28分前」とあるが、これは私と話した後に来たものだろうか。よく分からないが、掛け直す気力がなかった。
カード会社に電話をして、要件を伝える。その時、スマホが「ピッピッ」と鳴った。
これはオヤジからだろう。もしやANAカードが見つかった?
いや、それはない。私はその信号音を無視して、そのまま話を続ける。
「1月分は10,453円の引き落としがありますね? 未確定ですが」
と係の女性。
「それ、私が使ったんでしょうか? 誰かに使われた可能性あります?」
「それは分かりません」
私は恐ろしくなって、そのまま手続きを済ませた。再発行料1,100円はバカバカしい出費だ。カード番号も変わって面倒なのだが、仕方ない。
函館本線の下りに乗った。すると、オヤジから電話が来た。何と、ANAカードがあったというのだ! 旧工場(こうば)の事務室にあるテーブルの上に置かれている、ポケットティッシュの下に隠れていたという。
……あっ!!
そうだ、思い出した。私は出先でポケットティッシュをもらうのだが、あまりにもポケットに多くなったので、ある日まとめて取り出したのだ。その時、ANAカードも一緒に出してしまっていたのだ。
工場にあるはずがないと思い、こちらは探さなかったのだが、完全に盲点だった。
「お前に言われて、工場の机の抽斗とか探してみたんだけどさ、なくて、それでティッシュの下を漁ったら出てきたよ。すぐ電話をしたんだけど、繋がらなくて」
「……」
電話がバイブになっていて、まったく気付かなかった。あああ、あの時の電話に出ていれば!!!
私は気が遠くなった。
快速エアポート190号は、19時02分、札幌に着いた。私はKIOSKに入り、北海道時刻表(524円)を買う。最近はスマホの乗換案内で事足りるが、時刻表のほうがさすがに便利だ。
私は地下街を歩き、すすきのに出た。小樽でポシャッたので、とりあえず「氷の祭典」の鑑賞である。
今年の氷像は細工が見事で、なかなかに力作揃いである。観光客もそれなりに増え、ようやく観光らしくなってきた。
さて夕食を摂ろうと思う。「ラーメン山岡家」が美味そうだったが、ここは注文が券売機のチケット制で、待ち人が2人いた。こいつらがグズグズしているので、私は入るのを止めた。私はかなり短気なのである。
そのまま地下街を戻り、札幌駅近くまで来た。ここのグルメタウンで食すか。
杵屋に入ったが、ラストオーダーの時間が過ぎていて、断られた。吉野家もてんやも微妙に人が多く、入るのをためらわれた。
結局私はどこにも入らず、駅前のネットカフェ(アイカフェ・札幌ロイヤルセンチュリーホテル店)にチェックインした。21時06分の入店は、まずまずであろう。ネットカフェは、滞在時間の関係で、なるべく夜遅くがいいのだ。
フラットブースに入り、明日以降の本格的な旅行計画に入る。今回は出発前に、札幌と旭川の冬まつり情報を軽く検討したが、やはり出先のほうが熱が入る。旅行は、計画を立てている時がいちばん楽しいのだ。
(つづく)